部下に仕事を任せるうえで上司が考えるべき「責任」と「権限」
「部下が一人で業務を完遂できるようになる」というのは、ビジネスパーソンとしても、人としても、大きくレベルアップできたタイミングといえる。
しかし、多くの上司が部下に仕事を任せることを躊躇してしまい、レベルアップの機会を失わせてしまっている状況がある。部下のレベルアップのためには「仕事を任せる」ことが大事。では、どうすればいいのだろうか?
そんなときに読んでおきたいのが『部下を持ったら必ず読む 「任せ方」の教科書』(出口治明著、KADOKAWA刊)だ。本書では、人をどのように使い、どのように任せて、どのように組み合わせていけば、強いチームができ上がるのかを紹介する。
著者であり、ライフネット生命保険株式会社・代表取締役会長兼CEOの出口治明氏の部下たちは、会社のトップである出口氏に気を遣わないという。20代、30代の若手社員が「出口さん間違っています」「出口さん、さっきの言い方は何ですか?」と遠慮なく言ってくるのだ。
こういった部下たちとの壁のない関係性をつくっている理由を出口氏は、「性別も年齢も国籍も、垣根を取り払うことが大事」「多様な人材に人財に任せることでしか、会社は成長しない」と確信しており、そして「出口治明は『ちょぼちょぼ(関西弁でみんないっしょの意)の人間である』と自覚しているからだと述べる。
では、デキるリーダーは具体的に部下にどのような任せ方をしているのだろうか。
■「任せる」うえで考えておかねばならない「責任」と「権限」
部下に仕事を振る場合、「任せる」と「丸投げ」では大きな違いがある。「丸投げ」は、指示があいまい。一方で「任せる」は、権限の範囲を明確にしたうえで、的確な指示を与えることを言う。
そこで、部下も指示の内容を理解するまで聞き直したり、偽りのない報告をしなければいけない。的確な指示とは、双方のコミュニケーションがとれていることが重要だといえる。
また、部下に仕事を任せるときは「権限と責任を一致させる」ことを忘れてはいけないと出口氏は指摘する。部下を育てる基本は、責任を持たせること。そして、与えた権限の中で、部下に目一杯考えさせることも必要だ。
上司は部下に仕事を任せる権限を持っているのだから、部下が結果を出さなければ最終的には上司の責任となる。部下の失敗は、上司の責任だ。
ビジネスの世界は、結果責任。結果が伴わなければ、責任を取らなければならない、「長」のつくポジションを任される社員は、結果責任を負う見返りとして、高給をもらっているというのが出口氏の考え方である。
たとえ、部下が不祥事を起こしたとしても、そのことを知っていようが、知っていまいが、自部門の責任を取るのが上司だ。責任を取れる上司がいるからこそ、組織は強くなる。部下をもつ立場になった社員は、こういった責任も肝に銘じておかなければいけない。
■「仕事をしない社員」がいることは正常である
「働きアリは全体の2割がサボっている」といわれるが、これは人間も同じだ。会社に「サボる社員」がいることは、実は正常な状態だ。
集団が形成されると「2割:6割:2割の割合で、3つのグループに分化される」と一般的に考えられている。上位2割が、高い収益や生産性を上げる優秀グループ。中位6割が、平均的なグループ。下位2割が実績や生産性が低いサボっているグループ。不思議なことに、下位2割がいなくなっても、「2:6:2」の割合になる。
なぜ、必ず「2割の下位グループ」が存在するのかというと、「緊急時や不測の事態に対応するため」「余力を残しておくため」という説がある。
もし、「仕事ができない」「サボっている」という社員が社内にいたとしても、その「下位2割」が存在しているから、正常な集団となっているのだ。
「下位2割」を何が何でも排除しようとする上司は、社会のしくみや構造がまったくわかっていないと出口氏は指摘する。
「信頼して任せる」ことができるのが、リーダーにとって大切なこと。そのために何をしたらいいのか。本書からそのコツやヒントを得ることができるはずだ。
(新刊JP編集部)