だれかに話したくなる本の話

データ分析で必要な3つのステップと求められる「想像力」とは?

「データ分析」というキーワードは近年のビジネスのキーワードである。

ITによる技術革新によって大量のデータ処理が可能になった。その一方で、社会や経済の複雑化によって直感による意思決定が難しくなり、データ分析の必要性が求められている。また競争の激化は徹底した効率化を求められている。

つまり、手段とニーズ双方から、「データ分析」の重要性が高まっているといえる。
「分析力」の高さは、その企業にとっての武器なのである。

しかし、まだ多くの人が「データ分析」の全貌を“誤解”しているかもしれない。

『会社を変える分析の力』(河本薫著、講談社刊)は、データ分析を活用する力を身に付けるための入門書的な一冊だ。

そもそも「データ分析」とはなんだろう。
単純に「数値を集めて分析する」というだけではない。実はその意味は幅広い。

「統計分析」「数理計画」「数値シミュレーション」「テキストマイニング」…いろいろあるが、IT技術や分析手法は手段にすぎない。一番大切なのは、データから問題を解明するプロセスを構想する力だと著者は述べる。

これは、食材や調理器具を揃えても、お客さんを満足させるメニューと調理方法を考案する力がなければ、おいしい料理を作れないのと同じことだ。
コンサルタントにデータ分析を依頼すると、「どんな方法で分析したか」「どんなデータを用いたか」ばかりが長々と説明されるかもしれない。しかしこれはデータ分析としては失格だ。 重要なことは「それは意思決定にどう役立つのか」という点だ。何分新しい仕事であるため、新たな方法論ばかりにこだわってしまいがちだが、その分析データが役に立たなければ何の意味もない。

著者は、データ分析でビジネスを変える3つのプロセスをあげる。

(1)まず課題を見つける
(2)その課題を、データを使って解く
(3)そのデータを使わせる

このうちの(2)までがデータ分析の仕事と思われがちだが、その先の「使わせる」ことが何よりも重要なのだ。

■データを「使わせる」ために必要なこととは?

では、意志決定にそのデータを役立ててもらうにはどうすればいいのだろうか。 それには、分析結果を意志決定に使えるが見極める力が必要になるだろう。

データ分析で得た解は必ず正しいとは限らない。その示唆を元に意思決定をくだし、その結果、損失が出てしまうこともある。そして、意思決定には様々な種類があり、「解が少しでも外れたら致命的」な意思決定、「多少外れても問題のない」意思決定もある。

この点から、意志決定に使えるかどうかを見極めるプロセスは、「どのくらい外れそうか」を推し量るステップと、「意思決定は、その外れを許容できそうか」を判断するプロセスを踏むことになるのだが、そのうち見誤りやすいのが「どれぐらい外れそうか」だと著者は指摘する。

例えば、ある投資ファンドは、金融商品の価格予測は外れても僅かだろうと思い込んで予測結果を信じ込んで大量の金融取引を行ったところ、想定外の価格下落に遭い、大損失を被ってしまったという。

データ分析は、過去のデータを分析して将来などを未知に関する示唆を得ることだが、過去のトレンドや相関関係は崩れることもある。データ分析者は「外れの想像力」を養う必要があるのだ。

著者はデータ分析を次のように定義している。

「過去(既知)の延長上に将来(未知)もあるという世界観の中で、将来をできる限り正確に予測ないし判断するためのプロセス」(p.124より引用)

本書ではデータ分析の基本的な考え方から、分析力を向上させるための流儀、そして「分析プロフェッショナル」という職業への道まで指南している。

分析の3つのステップが的確にできるようになれば、経営の意志決定のスピードは速くなり、イノベーティブな土壌をつくることも期待できる。「分析力を武器にした企業になってもらいたい」とは著者の願望だ。今、多くの企業に必要なことが本書で述べられている。

(新刊JP編集部)

会社を変える分析の力

会社を変える分析の力

データ分析への誤解に答える一冊。

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