自己啓発の世界的古典『道は開ける』、その執筆の経緯と内容とは?
仕事や金銭面、人間関係など、何かが満たされたとしても、また新たな不満や不安を見つけてしまうもの。満たされないのは、内面の問題ということなのだろう。では、不安や悩みにどう対処すればいいのか。
そんな不安・悩みの対処法を様々な本が論じているが、この本を忘れてはならない。デール・カーネギーの世界的なベストセラーである『道は開ける』だ。
邦訳版は累計300万部以上と、自己啓発の古典的存在として知られ、若者から高齢者までどんな人にも役立つ、不安や悩みを克服するための方法がつづられている。
今回取り上げている『【決定版カーネギー】道は開ける:あらゆる悩みから自由になる方法』(D・カーネギー著、新潮社刊)は、初版本か重要な部分をセレクトして再編集した新訳版。見やすいレイアウトでカーネギーの教えと魅力をわかりやすく紹介した一冊だ。
■なぜこの本は書かれたのか?
本書が本国アメリカで出版されたのは1948年のこと。では一体なぜこの本が書かれたのか?
カーネギーは冒頭でまず自分の半生を振り返る。若かりし頃のカーネギーはニューヨークで誰よりも不幸であり、日常生活では嫌なことばかり起きていた。「これが人生だというのか?」と不満を抱いていた。
読書と執筆のための自由な時間がほしい。嫌な仕事をやめたとしての得るものは多くても失うものはない。「豊かな人生の作り方に興味がある」――こう考えたカーネギーは、人生の決断を下す。それは、「嫌いな仕事を辞める」というものだった。
カーネギーは「話し方」と人間関係構築のプロだが、そのキャリアはここでの決断がスタートとなっている。YMCAの夜間学校で話し方を教え始め、口下手でコミュニケーションが苦手な人たちの前で、教師として実績を積んでいく。
給料は歩合制だった。そのため、離脱者が出られては困るということから、授業を面白くする工夫もした。その仕事はかなり刺激的だったようだ。
そして、カーネギーが彼らに教えた「人を味方につけ影響を与える方法」を『人を動かす』と名付けて1936年に出版。世界的なベストセラーとなった。
しかし、カーネギーは『人を動かす』がベストセラーになる中で、もう一つ重大な問題があることを実感する。カーネギーの講座を受けるビジネスマンたちのほとんどが「不安や悩みなどの心の問題を抱えている」と気付いたのだ。
さらに、自分の講座でテキストとして使えそうな「不安や悩みを解決するための本」がないことに気付き、自分で書くしかないという理由から『道は開ける』が書かれることになった。
■どんなことが書いてあるのか?
人々は不安や悩みに苛まれている。では、不安を解消するにはどうしたらいいのか。
カーネギーの答えは、「とにかく行動すること」だ。これは、心理学によって明らかになった最も基本的な法則に基づいている。その法則とは「どんなに頭脳明晰な人でも、人間は一度に一つしか思考できない」というものである。
何かに夢中になったり、熱中している間は、同時に憂鬱でいることはできない。不安の治療法は、何か前向きなことに完全に集中することなのだ。
カーネギーがミズーリ州の農場で少年時代を過ごしていた頃、心配ばかりしていたという。雷雨が来れば落雷で死ぬことを心配し、不景気のときは飢えることが心配。死んだら地獄に行くのではないかと心配していた。まだ起こってもいないことを恐れ、心配していた。けれど、年月が経ち、心配していたことの99%は結局、起きなかったことに気づく。
心配に値することかどうか統計的に理解して、くよくよ思い悩むのをやめれば、今すぐに心配や不安の9割が消えるだろう。たとえば、落雷で死ぬ確率は国家安全保障会議によると、35万分の1以下だ。落雷で死ぬことよりも、8人に1人が命を落とす癌を心配すべきなのだ。
心配したり、不安に感じるならば、実際に起きる可能性はどれくらいあるのか記録や統計を調べてみること。そうすれば、自分の心配がどれほど実現しないか理解できるのである。
人は過ぎ去った過去を悔やみ、苦悩するもの。しかし、「あのとき、ああしていれば…」と考えたところで、過去に時間を遡ることは不可能だ。だからこそ、出来事を前向きにとらえ、過去の失敗を冷静に分析し、何かを得なければいけない。
何千人もが不安や悩みを克服した記録のレポートであるのが『道は開ける』だ。この本の目的は、古くから伝わる基本的な真理について、解説し、簡潔にして価値を再確認する。そして、それらの心理を実践するよう促すことにある。
豊かな人生を見出すためには、どうしたらいいのか。本書から気づかされることは多いはずだ。
(新刊JP編集部)