だれかに話したくなる本の話

草木染めに挑んだらタンポポモンスターが生まれた話

提供: 新刊JP編集部

初夏ですね。
以前、編集部日記で、染物に使うタンポポの花を集めているという事を書きました。

しかし、道端に咲く花を集めているだけでは、なかなか集まらない。どこかタンポポがまとめて咲くところはないだろうかと考えて、ふと頭に浮かんだのは近所の土手でした。
さっそく行ってみるとそこには沢山のタンポポが。

私は記事で使う写真を撮ることも忘れ、野球少年たちの視線も気にせず、タンポポを摘んで摘んで摘みまくりました。
今までちまちまと集めていたのが馬鹿みたいに集まり、目標の7割程まで摘んだところで「また今度来よう」とその日は帰宅。
折しもゴールデンウィーク少し前。長い連休のうちにまた摘みに来て、そのまま染色までこなせるだろうと踏んでのことでした。
それが悲劇のはじまりだとは、このときの私は知らなかったのです。

いざ迎えたゴールデンウィークはなんだかんだで忙しく、タンポポを摘みに行くことはできませんでしたが、落ち着いてから行けばいいかと気楽に考え、5月半ばに土手へ。
その時私が見た光景は

緑の大海原!!!!

おかしい。
ここには確かに沢山のタンポポが咲いていたはずなのに、私のタンポポ摘み放題会場はどこへ行ってしまったのだろう。
カンカン照りにあぶられたミミズの死体が大量に転がり、かろうじて残ったタンポポの葉はしおしおになって地面を這う有様。変わって背の高い草が力強く伸びて中からはけたたましい野鳥の鳴き声が。
わずか1、2週間のうちに、土手は夏を迎えていたのです。なんてこった。

もうこうなれば、今あるタンポポでなんとかするしかありません。量は足りないかもしれませんが、いざ染色です。

今回染めるのは、モヘア200グラム。
染めた後はテディベアにします。
タンポポで染まった「タンポポベア」ってその言葉だけで既に可愛い。実際はまだ布だけどきっと可愛い。

そんなイメージを形にすべく、さっそく作業に入るのですが、いきなり染めるのではなく布の下処理からはじめます。
モヘアはアンゴラヤギの毛で動物性のタンパク質がありますが、台地はコットンなので、場合によってはそのままだと染まらないことがあります。
そのために下処理は必要な作業なのです。
無調整豆乳をお湯と1対1で薄めたもので20分程煮ます。

豆乳+鍋なので、だんだんと湯葉っぽい料理を作っているような気持ちに。
「ちょっと毛がのどに絡むかもしれないけど、おいしい豆乳鍋だよ。クリーミーだよ」と、私の心の調理師は言うのですが、味見はしません。

豆乳がついたまま乾かしておきます。

次は媒染です。いろいろと方法はありますが、今回はミョウバンで染めることにしました。
布の重さの20%のミョウバンをぬるま湯にとかし、水洗いした生地を20分程煮ます。
沸騰させないように注意。

ミョウバンは漬物などで使うので、スーパーに売っています。

煮ているところ。
水が透明で料理感が少ないので、私の心の調理師は沈黙。

煮終わったら、よく水で洗います。

さあ、生地の下処理が終わったという事で、お待ちかねのタンポポです。
集めに集めて冷凍保存していたタンポポ。

……気持ち悪い!!!!!

が、これを!煮ます!!!

ぎゃぁぁぁあああ、、、、、
本当に気持ち悪い!!!!

私はとんだモンスターを生んでしまったのではないか。
モザイクをかけておいた方が読者に優しいのではないかとフォトショを開きかけるグロテスクさですが、そのまま煮ていきます。

水の色が変わってきました。
染液の完成です。

タンポポをざるでこして、染液から取り出します。
と、同時に私の心の調理師が騒ぎ始めます。
「これは食べられるんじゃないか、タンポポのおひたしだよ。醤油をたらすとおいしいよ」
……うん、ちょっとイケそうな気がする。

出来上がった染液に、布を浸していきます。

染液少な……!!!!!
タンポポを集めきれなかった影響が出てきました。

本当は布が浸るぐらいないといけないのですが、少ない染液に無理やり布を押しあてながら、なんとか染めていきます。
捨てずにとっていた出がらしのようなタンポポをもう一度煮て、染液をかさ増しさせながら90度で20分程煮ます。
冷めたときに色がしみこむので、一晩放置。
ボロ雑巾のようだ…

よく水洗いして乾かせばすべての工程が完了です。
すると……

見てください、この毛並!タンポポの黄色とかすかに草の緑も感じられる爽やかな色合い。

中盤のモンスターから生まれたとは思えぬ出来栄えに胸を撫で下ろしました。
正直ここまで綺麗に染まってくれるとは。

草木染めは手間がかかって重労働ですが、自分で染めた布には愛着がわきます。
皆さんも機会があればぜひ挑戦してみてください。

お疲れ様でした!

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この記事のライター

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ハチマル

本業はデザイナーだが、成り行きで記事を書くことに。
好きなジャンルは時代小説・手芸本。

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