【「本が好き!」レビュー】『きょうは、おおかみ 』キョウ・マクレア著
提供: 本が好き!「2018春のやまねこ祭!」参加書評です。POP部門に登録させてもらいました。
不安定だったバージニア・ウルフと、支えていた姉バネッサの心をつなぐお話です。
ある日、目が覚めるともう駄目でした。
ぐるるる、がるるる。バージニアの心はどうにも収まりません。
理由? 理由なんてありません。そんなことが分かったら苦労しません。
お姉さんが絵を描いていても、
友だちがベルを鳴らしても、
黄色い服を見ても、
はみがきの音だって、
小鳥のさえずりさえも。
全部、ぜーんぶ駄目なバージニア。
たったひとこと、「ほっといて!」
少し時間をおいてみます。
明るい気持ちになれることが、きっとあるはずとバネッサが聞くと、
ようやく重い口が開きます。
この空を飛んでいけたらいいかもね、と。
飛んでいきたい場所はブルームズベリー。
ベリーの甘い香りに満ちた、きれいに咲きほこる庭。
バージニア・ウルフが追い求めたものは、小さな女の子だった頃から
ずっとずっと同じだったのです。
誰もが心にちょっとずつ持っている生きづらさ。
バージニアの心の荷物は、ほかの人よりちょっと大きくて、
その最大の理解者は姉のバネッサだったのです。
姉妹の心の触れあいは、温かいだけではないけれど、
なんだかとても心の奥底を揺さぶるのです。
(レビュー:たけぞう)
・書評提供:書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」