自分が不幸なのは誰のせい? 幸福をめぐるグータラ人間と神様の議論に思わず納得
「幸せになるのと不幸になるの、どちらがいい?」と聞かれれば、誰もが「幸せになりたい!」と答えるだろう。
成功したい、お金が欲しい、人間関係を円満にしたい、家族と穏やかに過ごしたい。人それぞれ幸せのイメージは違うかもしれないが、誰しも進んで不幸になりたいとは思わないはずだ。
そんな幸せを考えかたひとつで手に入れられる一冊が、『神さまとのおしゃべり』(さとうみつろう著、サンマーク出版刊)だ。
本書は2014年に出版され20万部を超えたベストセラーだが、新たに文庫化されたことで再び注目が集まっている。
本書は、ズボラなサラリーマンの「みつろう」の前に、ノリのいい「神さま」が現れ、成功法則や引き寄せの法則について語っていくストーリーだ。二人のざっくばらんとして、バカバカしさが漂う会話は読み口が軽く読みやすい。しかし、その内容はとても深いものになっている。
では、本書の「神さま」は、どんな「幸せになるコツ」を教えているのかを紹介していこう。
■今感じている「不幸」は自分が願ったもの?
神さまは、みつろうにまず、「幸せ」について一番大切な教えを説く。
「お前はすでに幸せじゃ。なぜなら、お前の願いは一つ残らず全て目の前に叶っておる」(引用P19)
「ある人にとっての「現実」とは、100%その人の思い通りにできている」(引用 同上)
しかし、みつろうは「願いなんて一つも叶っていない!」と反論する。しかし、神さまはそれでも、「ひとつ残らず叶っている」と繰り返す。
例えば、グータラなみつろうは「会社になんて行きたくない」と言う。すると神さまは、「行きたくなければ行かなければいい」と言ってのける。みつろうは「会社に行かなければご飯が食べられない」「ご飯が食べられないと死んでしまう」「死にたいわけがない」と反論する。
ところが、神さまは「お前は今、生きている」「生きるためにご飯を食べることも叶っている」「食べるために給料をもらうことも叶っている」と全ての願いがすでに叶っていることを指摘する。 さらに、「給料をもらうために会社に就職したいと願ったのも自分」であることを指摘し、「現実」が何もかも望み通りになっていることを諭す。
みつろう:「会社に行きたい」と自分で願っておきながら「会社に行きたくない」と同時に願うなんて、バカなのか俺は?
神さま:そうじゃ、よく気づいたな!バカなんじゃよ!だって望んだことは全て、100%目の前で叶っている、お前たち人間はそれに気づけていないんじゃから。バカとしか言えんじゃろう。そもそも、不幸な人なんてこの世に1人もおらんよ。(引用P21-22)
神さまはこのように説き、「全てが叶っている=幸せなのに、その事実に気づけていない人が「自分は不幸だ」と思い込んでいるだけ」「現実に不満があるなら、願った本人が「自分の願い」に気づけていないだけ」だと喝破する。
これが本当なら、なぜ多くの人は「叶っているはずの自分の願い」に気づけず、不満ばかりを感じてしまうのだろうか?
■「豪邸を建てたい」という願いはなぜ叶わない?
一度は「何もかもが目の前で叶い続けている」ことに納得するみつろうだが、「豪邸を建てたい」という願いが叶っていないと言い出す。
しかし、神さまはこれにも「叶っているのに気づけていないだけじゃ」と繰り返す。
願いには色々な種類があるが、その中の一つが「信じたい」と言う願いだ。「信じる」とは「こうであってほしい」と願っている状態だ。たとえば、「正義は勝つ」と信じている人は、「正義は勝ってほしい」と願っていると言い換えることができるのだ。
「豪邸を建てたい」と言う人がいても、心の底では「一介のサラリーマンが豪邸なんて建てられない」と「信じて」いるだろう。
この「一介のサラリーマンが豪邸なんて建てられない」を願いの形に変容すると、「サラリーマンは豪邸を建てないでほしい」となってしまう。つまり、口でいくら「豪邸が建てたい」と言っていても、深層心理で逆のことを信じているから、“望んだ通りに”願いが叶わないのだという。
そして、こうした願いの結晶である「観念」をいかに理解するかが「幸せ」に近づく第一歩なのだが、この続きはぜひ本書で学んでほしい。
本書は、かなりくだけた会話で書かれているが、その背景には、西洋哲学の観念論や幸福論、中国の古典的思想である老荘思想、心理学や量子力学といった領域からの教えがうかがえ、濃い内容になっている。
みつろうは、神さまの言葉を理解して行きながらも様々な出来事を通して「やっぱり俺は不幸だ!」「言ってたことと違うじゃないか!」などと反論をしつつ、その度により深い教えに導かれていく。読み進めていくうちに、思わず納得してしまうことも多々あるだろう。そして、読者も自身をみつろうと重ね合わせて一つ一つ疑問や悩みが解消されていくはずだ。
(ライター/大村佑介)