【「本が好き!」レビュー】『クイーン談話室 』エラリー クイーン 著
提供: 本が好き!本書は、EQMM(エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン)に掲載されていたコラムエッセイの一部を加筆修正してまとめたものです。
ミステリ雑誌の記事なので、当然ながらその内容はミステリに関する四方山話になっています。
ご存知のとおり、エラリー・クイーンというのは、アルフレッド・ダネイとマンフレッド・リーという二人の従兄弟の合作ペンネームなわけですが、どうやらこのコラムエッセイはダネイが一人で書いているもののようです。
その内容はバラエティに富んでおり、作者の視点から書かれている回もあれば、一読者の立場で書かれているものもあります。
クイーンは優れた編集者であり、アンソロジストでもあるのですが、そのような目で書かれているものもあります。
はたまた、クイーンは大の稀覯本蒐集家なのですが、そういう立場からのコラムエッセイもあります。
大変興味深い話も多く、あのディクスン・カーとミステリについて語り合ったというエピソードなども含まれており、あるいは、ミステリ作家同士がそれぞれが思いついたは良いものの解決を考え出せなかったプロットを交換し、お互いが相手の考えた謎の解決に成功してそれぞれが作品を書いていることなどの裏話的なものも紹介されています(これは大変有名な話ですよね)。
EQMMに掲載されたコラムエッセイの中で非常に人気が高かったというコラムエッセイも収録されています。
それは、ダネイがミステリに目覚めた少年時代を書いたものです。
当時、ダネイは病気で臥せっていたのですが、親が図書館から借りてきてくれた『シャーロック・ホームズの冒険』に一発でノック・ダウンされてしまったのです。
朝までかかって一気に読了し、大変な衝撃を受けたそうです。
図書館が開くのが待ちきれず、朝早くから家を抜け出し、図書館の前で開館時間を待ち、強引に頼んで自分の図書館カードを作ってもらい、職員からドイルの作品がある棚を教えてもらい、そこにあったホームズ物を借りてきて夢中になって読んだのだそうです。
大変ほほえましいエピソードであると共に、本が好きな人なら多かれ少なかれ似たような経験をしているのではないでしょうか。
その時のダネイの心境には同感だなぁという感想をお持ちになると思います。
そして、こうして偶然のようにホームズ物を読んだために、あのエラリー・クイーンが後に生まれることになったというのも、クイーン・ファンからすれば読んでくれて良かった~と思ってしまいます。
だって、もし、ダネイやリーがミステリに興味を持つことがなかったとしたら、私たちはあのクイーンの傑作を読むことができなかったわけですから。
読了時間メーター
□□□ 普通(1~2日あれば読める)
(レビュー:ef)
・書評提供:書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」