だれかに話したくなる本の話

「文学的失語」に見舞われた芥川賞作家 6年ぶりの新作を語る(2)

「文学的失語」に見舞われた芥川賞作家 6年ぶりの新作を語る(2)

作家は、大きく分けて2種類いる。

速ければ年に数作ものペースで新作を量産できるタイプと、一つの作品を仕上げるのに長い時間を要する寡作なタイプである。

8月に『岩塩の女王』(新潮社刊)を刊行した諏訪哲史さんはまちがいなく後者。2007年に『アサッテの人』で群像新人文学賞と芥川賞を受賞し、華々しくデビューした諏訪さんだが、前作『領土』を2011年に刊行して以降、実に6年もの間、小説の発表がなかった。

この「沈黙の6年」をどのように過ごし、新作『岩塩の女王』を書き上げたのか。そしてデビューから10年を経た今の心境はどのようなものか。前回につづき、諏訪さんにお話をうかがった。(インタビュー・記事/山田洋介)

『岩塩の女王』

岩塩の女王

岩塩、なんと崇高な、魅惑的な鉱物であろう――作家生活十年の記念碑的小説集。芥川賞受賞の鮮烈なデビュー作から、さらに千変万化する緻密な小説世界。日常と地続きの異界へ。自分の内なる非日常空間へ。探索は果てなく進み行く。〈これが今の僕の「身体」である〉。六年ぶりの小説集。「無声抄」「岩塩の女王」「修那羅」「ある平衡」「幻聴譜」「蝸牛邸」―― 典雅な言葉の結晶が異空間を創出する六篇を収録。