だれかに話したくなる本の話

名作小説の気分が味わえる?スコットランドの「いわくつきの島」が破格の安値で発売中

クルーザーを持っている。
別荘を持っている。

などなど、お金持ちステータスになりうる持ち物は数多あるが、「島を持っている」と言える人はめずらしい。というのも、「島」と胸を張って言えるレベルの島を買うというのは、通常億単位のお金がかかるもの。並みの道楽者には手が出ない。

■スコットランドの美しい島の「いわく」とは

ところが、面積29ヘクタール、緑あふれる公園と19世紀に建てられた灯台があり、そしてもちろん目の前は見渡す限りの大海原と美しい海岸線という堂々たる島が、なんと日本円で約4700万円(428000ドル)という価格で売りに出されているのをご存知だろうか。

この件を報じている、アルゼンチンの「La Nación」、イギリスの「TheTimes」などによると、その島は、スコットランド・ボーグ沖数キロにあるリトル・ロス島(Little Ross Island)なる島。紺碧の海とあふれる自然が魅力的な、小説でいえばまさしくヴァージニア・ウルフ『灯台へ』の世界である。この小説で主人公家族が夏の別荘としていたのは、同じくスコットランド、ヘブリディーズ諸島のスカイ島だが、この島も美しさでは負けてはいない。リゾート地とみまごうばかりの島だが、なぜそんなに安いのかというと少しばかり「いわく」がある。

1960年のこと、この島を訪れた2人の旅行者が、島で灯台守をつとめていたヒュー・クラークの惨殺死体を発見するという事件があった。殺人事件の舞台となってしまったことで買い手がつかず、この価格になっているようだ。

ちなみにこの事件、ヒューと同じく島で灯台守をしていた同僚のロバート・ディクソンが容疑者として逮捕され、一度は絞首刑の判決が下ったが、後に懲役刑に減刑されている。

興味をもった人のために付け加えておくと、この「島」に含まれるものは、先述の公園や、ヒューとロバートが暮らしていた6部屋のコテージなどが含まれるが、灯台は含まれない。電力供給は太陽光(オフグリッド)と風力のみ。アクセスはプライベートボート、またはヘリコプターとなっている。

参考記事 Esta isla sale más barata que un departamento pero nadie quiere comprarla por su oscura historia
For sale: Little Ross Island, where lighthouse keeper Hugh Clark was found dead

(新刊JP編集部)

灯台へ

灯台へ

スコットランドの孤島の別荘。哲学者ラムジー氏の妻と末息子は、闇夜に神秘的に明滅する灯台への旅を夢に描き、若い女性画家はそんな母子の姿をキャンバスに捉えようとするのだが―第一次大戦を背景に、微妙な意識の交錯と澄明なリリシズムを湛えた文体によって繊細に織り上げられた、去りゆく時代への清冽なレクイエム。

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山田洋介

1983年生まれのライター・編集者。使用言語は英・西・亜。インタビューを多く手掛ける。得意ジャンルは海外文学、中東情勢、郵政史、諜報史、野球、料理、洗濯、トイレ掃除、ゴミ出し。

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