だれかに話したくなる本の話

【「本が好き!」レビュー】『字が汚い! 』新保信長著

提供: 本が好き!

字が汚い。僕の数多いコンプレックスのうちの、結構大きい方の一つである。
講義とかプレゼンとかで、本当はライブ感を出してホワイトボードを使いたいのに、字のヘタさではずかしくなってパワーポイントとか使ってしまうのだ。
左利きなのに、右手で書いてもあんまり変わらない字が書けるのだ。そのぐらい汚い。

なんていうことはさておき、『字が汚い』。他人事じゃない。

著者は編集者。もちろん字が汚い。東大の人はノートがきれいとかなんとかいうが、東大なのに汚い。というか幼い。その手書き文字で企画依頼を出したら色好い返事がこなかったりする。自分の字の汚さを掘り下げていくかと思いきや、さすが編集者、作家や同業者たちの壮絶な字を血祭りにあげていく。

きれいな字がかける系の練習帳にもチャレンジする。あはは。この字がきれいになる系の本というか練習帳の類もなかなかすごい。それらに一挙挑戦していく様は滑稽のようでいて結構参考にしちゃったり。でも練習なんかゲシュタルト崩壊につながるだけだ(とまでは書いてないけど)みたいな話があって僕好み。でも本だけに頼らずペン字教室にも挑戦する。この項、きちんと分析されていて、脱・汚い字にも役立つんじゃないだろうか(僕は諦めているのであんまり頭に入らないけどさ)。

筆跡を変えれば自分も変わる、なんて本もある。西原理恵子のような、きれいとはいえない字でも、堂々として受け入れられるものもある。中学生になるとなぜか丸文字を書いちゃうとか、政治家がみなろくな字を書かないこと、獄中の木嶋佳苗の文字を見て、これじゃ男もイチコロだと戦慄したりとか、プロ野球選手のそれなんか別の意味で戦慄だし、なぜかゲバ字まで出てくる。これキレイキタナイの話なのだろうか。

そうそう、もちろん「日ペンの美子ちゃん」も登場する。

というわけで、汚い字という拭いたくても拭いきれないアイデンティティを、それでもなお拭おうとして、これだけのことを並べ立てる、その意気やよし。スンマセン上から目線で。でもいいぞもっとやれ。

(レビュー:Masanori Sazuka

・書評提供:書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」

本が好き!
『字が汚い! 』

字が汚い!

字の汚さには定評のあるコラムニストの石原壮一郎氏、女子高生みたいな字を書くゲッツ板谷氏、デッサン力で字を書く画家の山口晃氏、手書き文字を装丁に使うデザイナーの寄藤文平氏らに話を聞き、作家や著名人の文字を検証し、ペン字練習帳で練習し、ペン字教室にも通った。その結果、著者の字はどう変わったのか…!?手書き文字をめぐる右往左往ルポ。

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