【「本が好き!」レビュー】『10分後にうんこが出ます:排泄予知デバイス開発物語』岸宣仁著
提供: 本が好き!「探偵ナイトスクープ」(注②)で、「男性は誰でもウンコをチビったことがある?」という依頼を調査していたことがあった。(2015年11月27日放送)
大阪の街で道行く大人に尋ねたところ、男性全員が便を漏らした経験ありと回答していて驚いた。
多くの女性は出なくて困っているというのに。
それにしても、テレビカメラの前で堂々と告白するとは、さすが大阪である。
本書は、漏らしてしまった体験をもとに、画期的な機器を開発する男性のフン闘記である。
著者は、起業家になりたいとアメリカに留学中、大便を漏らしてしまう。
それもチビるどころではない大惨事だった!
その後、いつまた漏らしてしまうのかと不安に思うのも当然だろう。
なんとかできないものかと考え、便が出るタイミングを知らせる機器の開発を思いつく。
その名は「DFree」(注③)。
・マッチ箱サイズ(注④)で、下腹部に装着し、超音波で便の動きを察知しBluetooth経由でスマホにデータを送る。
・スマホの専用アプリで何分後に排泄するかを予測し知らせる。
という仕組みである。
ところが思いついたはいいが、著者は高校時代に2回も物理の試験で0点をとったほどの根っからの文系男子であった。
その上、開発にかける資金も足りない。
そこから本書のメインである著者のフン闘が始まるのである。
SNSを駆使して人脈を広げ、資金調達に東奔西走する。
そして友人たちは、なんと長期間ボランティアで協力するのである。
機器を装着して排泄のデータをとり、ときにソーセージを突っ込むことも!
この人材集めこそ彼の能力、そして彼の周りに集まってきた仲間たちこそ彼の資産なのだろう。
大人のおもらしは辛い経験であり、精神的に大きな痛手を負うことが多い。
「DFree」は、漏らすのを恐れる方々だけでなく、脊椎損傷者や過敏性腸症候群などの患者、そしてなにより介護をしている多くの人にとって、大変役に立つだろう。
また、ビッグデータの活用などにより、無限の可能性を秘めた機器でもある。
開発の成功と機器の普及を祈りながら、著者を応援したい。
注①「MajiでBenする10分前?」・・・広末涼子のデビュー曲「MajiでKoiする5秒前」より。
注②「探偵ナイトスクープ」・・・朝日放送で1988年より放送されている関西の人気番組。大便のおもらし経験をスタジオで聞いたところ、西田敏行局長をはじめ、男性全員があると答えた。
注③「DFree」・・・「diaper」(おむつ)と「free」から。「おむつから自由になる世界」との意味をこめているという。
注④「マッチ箱サイズ」・・・大きさを表すのによく使われるが、最近はマッチ箱を見かけない。若い人はもしかしたら大きさを実感できないのではないか。
※本書は、こちらのサイトで私の好きそうな本だとご紹介いただきました。
調べたところまさに大好物の内容だったので、すぐに購入予約をしてしまいました。
好みの本までわかってらっしゃるとはさすがです。
本当にありがとうございました。
(レビュー:はにぃ)
・書評提供:書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」