【「本が好き!」レビュー】『ママがやった』井上荒野著
提供: 本が好き!小料理屋を営む百々子。七九歳。ママ。
夫の拓人、百々子の七歳年下。パパ。ずっと女が途切れない浮気性。
子供は三人。
一緒に小料理屋を手伝っている長女の時子、独身。妻帯者とばかり付き合っている。
次女の文子は三人子供があり、長女は二十歳で結婚するという。
末っ子の息子、長男の創太は定職につかずにふらふら。
ある日、創太が母のところに電話をすると、ちょうどかけようと思っていた、電話では話しにくいから店に来てほしいと言われます。
店に行くと、父を殺したという母。
姉たちも店に来ているのですが、
母は普通にごはんを作りだすし、
姉たちは来年八十歳になる母親を刑務所になんて入れられないと言うし、
ママがパパをやっちゃった理由は?と問う創太に、
理由を知ってどうするんだ、理由がわかると何か事態が好転するのか、もっと役に立つことを言えと姉たちは怒りだす始末。
パパの死体処理の相談を姉たちはしはじめ、創太はブルーシートを買いに行かされるのですが、
その途中で、今現在パパがつき合っている女とばったり出会ってしまい、姉たちにそれを告げると、店に連れて来いと言われ・・・
八編の短編集。
ひとつめで、年老いた母が、浮気性の父を殺したと告白。
二話目から七話目までは家族それぞれの思い出の物語。
そして最後の八話目で、最初の物語に戻って、父の愛人と家族たちが対峙します。
物語全体的にふわふわした雰囲気が・・・
母親が父親を殺したのに、家族全員のんびりとしていて。
この両親にしてこの子供たちなのね、と妙に納得してしまうというか。
ママは、パパのことを、もうなんにも言わないと決めて、浮気相手のことも知らんぷりしてきたけれど、でも誰と今付き合っているかも全部把握してて、
好きだったんでしょうね。本当に。
でもパパは地雷を踏んでしまった。
どんな女が相手でもよかったけれど、
一番思いだしたくない人のことを、パパはわざとわかるようにしたから、
地雷を踏ませてしまったから、
だから殺されちゃったのかしら。
いくつになっても、女は女のだなぁとしみじみわからされたというか・・・
それにしてもパパは本当にどうしようもない男だなぁ・・・
(レビュー:yuko)
・書評提供:書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」