「アニメプロデューサー」という仕事は“危ない人”ほど向いている
1977年に発足し、最近では『おそ松さん』をはじめ、『NARUTO-ナルト-』『うる星やつら』『幽☆遊☆白書』など名だたるアニメを制作してきたスタジオぴえろ。
その創業者である布川郁司さんは近著『「おそ松さん」の企画術』(集英社刊)の中で、ヒット作を生み出すための企画術、アニメーション業界の歴史、そしてコンテンツビジネスの未来と課題をつづっている。
布川さんへのインタビュー最終回はアニメプロデューサーに向いている人、そうではない人、布川さんが出会ったアニメ業界のすごい人についてお話を聞いた。
(取材・文/金井元貴)
■アニメプロデューサーに向いているキャラは「松野十四松」
――アニメプロデューサーに向いているのはどんな人だと思いますか?
布川:大風呂敷を広げられる人ですね。これは重要な素質です。それを仕舞うことも大事なのですが(笑)
――布川さんは徹底的に大風呂敷を広げるタイプですか?
布川:昔はそうでした。「このアニメはヒットする」なんて誰にも分かりませんから、そこは熱意を見せて、熱病みたいに伝染させていく。そうなると、周囲の人や取引先も「ここまで言うのなら、大丈夫だろう」と飲むしかなくなるわけです。
例えば、読売広告社の木村京太郎さんというプロデューサーは『おそ松くん』をはじめたくさんの作品でご一緒しましたが、彼は筆ペンで企画書を仕上げていたんです。ものすごいインパクトですよ。
では、彼と同じように筆ペンで書けばいいのかというとそうではなく、「この企画をやらせてくれ!」という熱を伝える手段の筆ペンなんです。そういう熱を伝えるのがプロデューサーなのだろうなと思いますね。
――『おそ松さん』に出てくる六つ子の中でアニメプロデューサーに向いているのは誰だと思いますか?
布川:これは難しいね…。しいてあげると、十四松かな。危ないけれど(笑)。でもね、危ない人の方がいいのかもしれないです。昔はすごいプロデューサーであればあるほど、「関わらない方がいいよ」なんていう噂が流れたくらいですから。
仕事ができることと、危ないことは、紙一重なんですよね。弁が立っていて引き受けるくらいの度胸がある人でないと、仕事を任せることはできませんよ。