だれかに話したくなる本の話

虫食専門家がランク付け 美味しい昆虫ベスト10

地球の人口の爆発的な増加にともない、問題視されていることがあります。「食糧不足」です。この危機を克服するために、国連食糧農業機関(FAO)が有効な一手としてあげたのが「虫を食べること」、つまり「昆虫食」でした。FAOは報告書の中では、昆虫を「タンパク質や脂肪、ビタミン、ミネラルなどが豊富で、健康的な食用資源」と高く評価しているといいます。
 しかし、「昆虫を食べるなんてそんな…」と身構えてしまう人も多いはず。テレビ番組などで、いわゆる“ゲテモノ食い”として面白く演出されることはありますが、普段の生活の中で昆虫を食べる機会はほとんどありません。
 ですが、実は、昆虫食は日本でも最近まで珍しくない文化でした。今でもイナゴやハチの子、サザムシなどが伝統食として知られています。ある調査によれば、1986年の段階でカミキリムシやガの幼虫が29県、カイコのサナギが27県で食べられていたそうです。さらに、私たちが食べられる昆虫の中には意外に美味なものもあるとか。

 『食べられる虫ハンドブック』(内山昭一/著、21世紀の食調査班/編集、自由国民社/刊)は、昆虫料理研究家の内山昭一さん監修のもと、“食べられる虫”が採集できる場所別に掲載されている、前代未聞の昆虫図鑑です。
 ここでは、内山さんが選んだ、日本で食べられる「うまい昆虫ベスト10」をご紹介します。

1位 カミキリムシ(幼虫)
 農業害虫として嫌われるカミキリムシの幼虫ですが、食材と考えると評価は一転。直火で焼くと皮はパリパリで中身はトロリとして甘く、バターの食感だといいます。味はマグロのトロに例えられるほどだそう。

2位 オオスズメバチ(前蛹)
 普段は怖いオオスズメバチですが、前蛹段階は甘味と旨みが濃厚で鶏肉や豆腐に似た風味になるそうです。宮崎県高千穂地方では、「フグの白子以上」と称賛言われているとか。しゃぶしゃぶ風にさっとゆがいてポン酢で食べるが一般的です。

3位 クロスズメバチ(幼虫・蛹)
 長野、岐阜、山梨、愛知などの中部地方に伝わる伝統食ハチの子は、このクロスズメバチの幼虫や蛹を指します。小粒ながらも旨みが強く、甘辛く煮てご飯に混ぜると、うなぎ丼の風味になるそうです。

4位 セミ(幼虫)
 成虫も幼虫も食べられるセミですが、美味しいのは幼虫。土から出てきて木に上り、羽化するまでに採取します。肉厚で歯ごたえ満点、ナッツ味で燻製もオススメとのこと。

5位 モンクロシャチホコ(幼虫)
 チョウの仲間ですが、食用になるのは幼虫、通称「サクラケムシ」です。毛虫の外見からは想像できないような上品な桜の葉の香りに誰もが驚かされ、旨みも濃いそうです。

6位 タイワンタガメ(成虫)
 東南アジアで食用にされており、オスの出すフェロモンは優しい洋ナシの香りがします。これは果実やハーブなどに含まれる、人にとってリラックス効果のある天然成分なのだそう。

7位 トノサマバッタ(成虫)
 大きいので食べごたえがあり、飛翔能力もあるので採るのも楽しいトノサマバッタ。揚げるとピンクに染まって、見た目にも食べやすいと内山さんは評しています。

8位 カイコ(卵)
 カイコの卵が8位に登場。誰もがプチプチした食感に驚くはずと内山さんは言います。その絶品ぶりに、和の鉄人・道場六三郎さんも「トンブリ以上」と絶賛したとか。

9位 クリシギゾウムシ(幼虫)
 栗の実を食べて育つ、通称“クリムシ”。幼虫はフライパンで少量の油を熱してサッと痛めると香ばしいとのこと。噛むと硬めの皮がプチッと弾け、中身は甘くてクリーミーなのだそうです。

10位 ヤママユ(蛹)
 繭をカットして取り出した活きのいい蛹の丸焼きは、香ばしくてほっくりした食感を味わえるそうです。茹でると甘味とコクがあり、植物系の豆腐のような風味を楽しむことができると内山さんはつづっています。

 いかがでしょうか。普通、食べ物についての原稿を書くときは、だんだんとお腹がすいてくるものですが、今回は食欲が出てきませんでした。しかし、昆虫の豊富な栄養価は見逃せないものがあります。遠くない未来、世界中の食卓で昆虫料理が並ぶ可能性もないわけではないのです。

 それと、昆虫を食べるときに必ず注意しなければいけないことがあります。「アレルギー」です。
 まず、エビ・カニなどの甲殻類アレルギーやダニアレルギーの人は食べてはいけません。また、「はじめての食材を摂取するときは常にアレルギーのリスクがあることを理解して、自己責任で食べること」と内山さんは言います。

 人間にとって有毒な昆虫がいたり、食べたあとに体調を崩してしまう可能性もあるなど、昆虫食には、アレルギーを含めた健康面へのリスクがあるのは事実です。
 それでも「ちょっと面白そう」「食べてみたいかも」などと昆虫食に興味を抱いたという猛者は、本書を手にとってみてください。人間にとって有毒な昆虫や、どんな方法で昆虫を調理すべきかが書かれているので、きっと頼りになるはずです。
 ただし、本当に食べるかどうかは“自己責任”の上でお願いします。
(新刊JP編集部)