仕事の中で得られる「体験」が会社を変える
良い人材が確保できない。若手社員が定着しない。
こうした悩みを抱えている経営者や人事担当の人は少なくないだろう。
今、日本の多くの企業が人材確保に苦しんでいる。また、価値観の多様化や世代間ギャップ、働き方の多様化、リモートワークの普及などの職場環境の変化もあり、以前よりもマネジメントが難しくなっている。
そんな状況で近年、重要性を増しているのが、従業員が仕事の中で得る体験価値である「従業員体験」だ。
『組織の未来は「従業員体験」で変わる』(英治出版刊)は、株式会社NEWON代表取締役社長の上林周平氏とグロービス経営大学院講師、MIRACREATION株式会社取締役の松林博文氏が、「従業員体験(Employee Experience)」の高め方を解説する一冊だ。
■従業員体験を豊かにする3つの視点
では、仕事を通じて従業員が得られる体験をつくるには、どうしたらいいのか。
体験といったら福利厚生や社内行事の充実を考える人もいるだろう。ただ、そればかりではいけない。むしろ社内行事が個々の社員にとってはネガティブな体験になる場合もあるので本質はそこにはないという。
従業員体験を豊かにしていくためには、3つの視点が重要になる。
1.期待値を合わせる
この組織でどんな体験ができるのか、従業員の持つ期待を適切に醸成し、期待値と現実のズレがないように従業員体験を設計する。
2.個別化して考える
体験の捉え方や意味合いは人によって異なるため、一人ひとりの価値観や資質、状況に合わせて従業員体験を設計する。
3.時間軸を意識する
組織に入ってから辞めるまでの理想的なプロセスを描き、時機に合った従業員体験を設計する。
2017年にアメリカの調査会社ギャラップが行った調査で、日本では「熱意あふれる社員」の割合は全体の6%。調査対象139カ国中132位で、その後の2022年の調査結果でも改善の兆しは見られていない。
働き方や価値観もさまざまになり、定年退職まで正社員として働くという前提から、より短期的で多様な働き方をするようになった。組織と個人の関係性の変化は年々スピードを増している。そうした急速な変化の中で、どのように柔軟にその変化に向き合っていくかが問われている。
経営者や人事担当者は、働く人の目線で仕事のなかで得られる体験をとらえ直すことが、組織の向上にもつながるはずだ。
(T・N/新刊JP編集部)