社員のメンタル不調を減らすために人事労務担当者に求められる発想の転換
前触れもなく、突然社員が辞めてしまう。
これは企業の人事労務担当者からしたらとても怖いことだ。厚生労働省の「労働安全調査」では、メンタル不調が原因で1ヶ月以上の休職、または退職する人が全事業の10%以上にのぼる。社員のメンタルヘルスに対する対応策はどのようにすればいいのか。
■社員のメンタル不調を減らすために人事労務担当者は何ができるか
『社員がメンタル不調になる前に 会社の責任? それとも……?』(藤田康男著、日本能率協会マネジメントセンター刊)は、社員がメンタル不調になる前に、人事労担当者が何をなすべきかを集約し、企業の人事労務担当者がどのように対処すべきかを示しただけでなく、メンタル不調への悩みを抱える当事者にとっても有益な心の支えとなる1冊となっている。
「なんとなくモヤモヤするなあ」と思ったとき、調子が悪くなりそうだからといってすぐに誰かに相談するという人はきっとあまり多くない。相談しない理由は、人に相談すると迷惑をかけてしまうのではないか、相談してもどうせ何も解決されないに違いないと思い込み、相談しても意味がないといったものが挙げられる。けれど、モヤモヤしたら相談していい、と著者の藤田氏は述べる。
メンタル不調は、不安、苦しみ、辛さの受け取り方や考え方を変化させることでも改善されうる。30分程度の相談だけでも、気分が楽になり、明日への活力が湧いてくることがある。問題の解決に焦点を当てるだけでなく、相談すること自体に効果があることを理解しておくことが重要なのだ。
人事労務担当者であれば、安心して相談できる場をつくる必要があることは理解しているはず。さらにもう一歩先のアイデアとして、相談者に「相談の成功体験を提供するように意識する」ことだ。単純に相談を受けやすくなる仕組みをつくるという意識だけでなく、相談してきた社員に、相談したことで良い方向に物事が進むようになった、という成功体験を積んでもらうことを意識した場を設計すること。社員自身が相談の成功体験を積むことで、相談することの意義を実感し、必要に応じて再度相談する。その好循環をつくる。これは、人に迷惑をかけない、相談しても問題が解決しないという感覚を取り除く体験にもなる。そういった仕組みをつくるためにも、まずは、人事労務担当者が相談すること自体を大切にする対応を心掛けることが大切となる。
モヤモヤと病気の境目はわからないし、メンタル不調に自分では気付けないもの。なので、病気ではない健康な状態でも、自らの判断で気軽に相談できるような仕組みづくりについて考えてみてはどうだろう。そこにメンタル不調になる社員を減らすヒントがあるのではないか。
(T・N/新刊JP編集部)