夏休みの自由研究に最適?奥深すぎるアリの生態
アリの行列を観察すると、アリ以外の生き物が混じっていて、アリの巣にはさまざまな昆虫が居候していることがわかる。アリと共生する昆虫は、どんな目的でそれを行っているのだろうか。
■様々な目的でアリと共生する昆虫たち
『アリの巣をめぐる冒険 昆虫分類学の果てなき世界』(丸山宗利著、幻冬舎刊)では、アリやシロアリと共生する昆虫を専門とし、アジアにおけるその第一人者であり、九州大学総合研究博物館准教授の丸山宗利氏が、アリの巣の居候たちの正体とは、どんな目的で棲んでいるのか、アリはなぜ居候を追い払わないのかなど、アリと共生する昆虫の世界を紹介する。
日本全土に分布するクロクサアリは、体調4ミリメートル程度、数万頭の働きアリからなる巨大な巣を作るアリで、生きた木の根本を掘り進み、そこに共生菌と木屑でできた巣を作る。アブラムシの出す甘露を主要な餌とし、アブラムシの集まっている場所と巣の間に恒常的な長い道のりを作る。
このクロクサアリの通り道にいるのがハネカクシだ。ハネカクシ科は甲虫目の一群。甲虫目は、あらゆる陸上の動物のなかで最大の種数を誇る分類群で、世界に37万もの種が知られている。ハネカクシは知名度こそ低いが、そのなかで最大の科で、世界から6万5000種あまりが記録されている。甲虫目といえば、カブトムシやクワガタムシ、カミキリムシなど、大型の昆虫が想像されがちだが、実はそれらは少数派で、大部分は5ミリメートル程度かそれ以下の小型種からなる。
ヨーロッパ産の同属のハネカクシは、アリの運ぶ餌に乗って盗み食いをするという行動が観察されている。では、日本の種はどうなのか。クロクサアリはときおり、長い行列の途中で見つけた昆虫の死骸も巣へと運ぶ。おそらくアブラムシの甘露では補いきれない栄養を摂るためだ。アリが昆虫の死骸の破片を運んでいると、ハネカクシはそのアリの運ぶ餌に跳び乗る。多いときには、1つの小さな破片に10頭近いハネカクシがかじりつき、それでもアリは気づかないという。
ある生物がその生活史のなかで、多少共アリと共生あるいは依存することを好蟻性という。シジミチョウは、幼虫が植物の上で葉を食べつつ、アリに甘い蜜を与え、代わりに外敵から保護してもらったり、アリの巣のなかに入り込み、アリに餌をもらったり、アリの幼虫を食べてしまったりする。さまざまな昆虫がアリと共生しているのだ。 公園などでアリの行列を眺めてみると、アリ以外のさまざまな昆虫が混じっているのを見つけることができるはず。そんなアリの行列を観察するのも面白いかもしれない。夏休みの自由研究の課題にもぴったりだろう。
(T・N/新刊JP編集部)