だれかに話したくなる本の話

タイガースのレジェンドOBが現4番打者につけた注文とは?

シーズンが中盤に入った2024年のプロ野球。パ・リーグは福岡ソフトバンクホークスが独走状態だが、セ・リーグは大きく抜け出したチームはなく、まだどの球団が上位に来るのかはまったくわからない。

そんな中で、7月1日時点で34勝34敗、4位につけているのが昨年日本一に輝いた阪神タイガースだ。昨年は村上頌樹投手のブレイクがチームの躍進に大きな弾みをつけたが、今年は才木浩人投手が本格化し投手陣を引っ張っている。そんな今年のタイガースをOBはどう見ているのか。

◾️掛布雅之氏が野手をライバル視しなかった理由

『虎と巨人』(中央公論新社刊)は、現役時代「ミスタータイガース」と呼ばれ、ファンに親しまれた掛布雅之氏が、自身の現役生活を振り返りつつ、タイガースやライバル球団の読売ジャイアンツの名選手たちとの思い出を明かしている。

ちなみに昨年からタイガースを率いる岡田彰布監督は、掛布氏の二歳年下で、プロ入りは6年遅い。選手時代の岡田氏は、掛布氏にとって「頼もしい後輩」だったものの、ライバルとして見たことはなかったそう。というのも、岡田氏が入団した頃には、もう掛布氏はタイガースの4番を任されていた。

掛布氏によると、4番打者はチームのナンバー1であり、ナンバー2以下とはやる野球がまったく異なる。頼もしい後輩ではあれど、自分が4番であり、ナンバー1である以上、ライバルとは見なさない。4番に対するこだわりとプライドが見え隠れする野球観、チーム観である。実際、タイガースの4番に座って以降、掛布氏がライバル視するのはもっぱら投手だったそうだ。エース投手、つまり投手のナンバー1である。

◾️「ミスタータイガース」が求めるタイガースの4番打者像

4番打者については並々ならぬこだわりを持つ掛布氏が今のタイガースの4番として期待をかけているのが大山悠輔選手だ。昨年はタイガースの生え抜き選手としては1985年の掛布氏以来となる全試合4番での出場を果たした大山選手に一定の評価をした掛布氏だが、打率2割8分8厘、19本塁打だった大山選手に対して「3割30本」という数字を合格ラインとして示すなど、まだまだ成長してほしいと願っているようだ。

大山選手について、掛布氏は「4番打者としてもっとわがままな打撃をしてほしい」と注文をつけている。生真面目な性格ゆえに4番に座っても「つなぎの打撃」をしてしまいやすい大山選手は、掛布氏にとっては少し物足りないのかもしれない。

昨年、大山選手はリーグ最多となる99個の四球を選んだ。その結果、後ろの5番を打つことが多かった佐藤輝明選手の打点が増えた。もちろん、チームプレーとしては正解である。しかし、掛布氏は「自分で決める打撃」を求めているのだろう。そして大山選手はそれができる選手だと見込んでいるのである。

大山選手の他にも、佐藤輝明選手、近本光司選手、坂本誠志郎選手など、タイガースの主力選手について期待を込めたコメントを残している掛布氏。シーズン連覇を目指すタイガースの今後を占う上で、氏の選手評は一つのヒントになるのではないか。

(新刊JP編集部)

虎と巨人

虎と巨人

1985年以来、38年ぶりの日本一に輝いた阪神タイガース。2年連続のBクラスに沈み、阿部慎之助新監督のもとで戦う読売ジャイアンツ。長嶋・王・江夏・田淵、レジェンドの記憶から、大山・佐藤輝・森下・岡本、スター選手に送るメッセージまで――ファンに愛され続ける“ミスター・タイガース”が、15年間の現役時代をふり返るとともに、「伝統の一戦」を繰り広げる二つのチームについて、その魅力を語りつくす。

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