文章が苦手な人こそ知るべき「不正解な書き方」
人前で話すのは得意な人でも、文章となると勝手が違う。「話す」と「書く」は通底するものではあるが、やはり話すには話すの、書くには書くのコツがある。
『文章の鬼100則』(明日香出版社刊)は、「言葉の力」で人を動かすための本だ。
単に文章力を上げるための本のように見えるが、人の心をつかみ、訴えかける文章が書ければ、スピーチもプレゼンも秀でることができる。そのために、まずは文章なのだ。
■すべてはワンメッセージのために
文章は基本的に何かを伝えるために書く。
特にビジネス文書には、例外なく伝えたいメッセージがあるはずだ。
ここで問題になるのは、書き進めるごとに、「あれもこれも」と伝えたいことを詰め込みすぎてしまうこと。メッセージが伝わりやすいようにと、補足的な情報をどんどん追加してしまい、やたらと込み入った文章になってしまった経験を持っている人は少なくないはずだ。これをやればやるほど、本当に伝えたいメッセージが、文章全体のなかで際立たなくなっていく。
文章で心がけるべきは「ワンメッセージ」に絞ること。そしてそのワンメッセージを、オリジナリティのあるものにすることだ。情報を詰め込むのではなく、たった一つのメッセージを伝える表現を工夫する。それが人を動かす文章づくりの基本である。
■あなたの文章は「流し読み」に耐えられるか
文章をワンメッセージに絞り、シンプルな文面にするのは、ビジネス文書が熟読されるとは限らないからだ。
もちろん、書いた本人としてはせっかく書いたのだからじっくり読んでほしいはずだが、上司や経営陣、取引先担当者などなど、立場が上の人ほど忙しい。精読してもらえるとは思わない方がいい。
だから、文章は「流し読み」に耐えうるものにしなければならない。もし自分の文章に対して的外れな質問をされても「ちゃんと読めばわかるじゃん!」と怒らずに、「ちゃんと読まなくても伝わるように工夫しよう」と考えるのが、文章で人を動かすための秘訣だ。そのためのシンプルさである。
■常套句はオリジナリティからもっとも遠い
シンプルであっても、人の記憶にのこるワンメッセージを考えるのが、文章づくりの大きなテーマ。ここに「こうすればOK」という正解はない。ただ、「やらない方がいいこと」ならある。「常套句を使うこと」だ。
常套句・慣用句の類は不思議なもので、知っていると使いたくなる。すらすらと話が出てくるスピーチ上手は「立て板に水」と表現したくなるし、相手のなすがままにするしかない状況に陥ったら「まな板の上の鯉だよ」と言いたくなる。こういう常套句の類がビジネスには溢れかえっている。
思い返してみよう。「高性能」「高品質」「最先端」「厳選した」といった言葉を無自覚に使っているなら要注意。これらはすべて常套句。あまりに手あかがつき、オリジナリティからは遠く、もはや人の心を動かす力はないのだ。
メッセージを強く印象に残るものにする特効薬はなく、地道に磨いていくしかない。ただ、メッセージを弱めてしまう「不正解」はあるのだ。
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本書には、ここで紹介したもの以外にも、メッセージを伝えるだけでなく、強く印象づける文章づくりのための100のポイントが明かされている。
言葉の力を磨き上げることは、文章だけでなく発言の精度も高める。訓練していくとビジネスの様々な場所でその恩恵を感じるはず。始めるなら、早い方がいい。
(新刊JP編集部)