悪気はなくても部下を傷つけている上司の3つの発言
仕事にどのように取り組み、何を目標にするかはつまるところ自分次第なのだが、それでも周りからかけられた言葉によってやる気が出たり、逆にせっかくのやる気が萎んでしまったりもする。
特にリモートワークが普及して同僚と顔を合わせずに仕事をすることが珍しくなくなった今、これまで以上に言葉の力が担うものは大きくなっている。人を傷つける言葉や人のやる気を奪う言葉は、基本的には対面で言われようとモニタ越しに言われようと人を傷つけ、やる気を奪うものだが、リモートだと「場の雰囲気」が言葉を中和することがなく、ダイレクトに伝わることを考えて言葉を選びたい。
たとえば無意識に部下や後輩にこんなことを言ってしまっていないだろうか?
■育休から復帰した部下に上司が言い放った驚愕のひとこと
『人を追いつめる話し方 心をラクにする話し方』(ひきたよしあき著、日経BP刊)は、ビジネスシーンでよく見かける場面で、どんな言葉が相手にプラスに作用し、どんな言葉が相手の心を冷やしてしまうのかを解説する。
たとえば、こんなケースが出てくる。
育休が明けて職場に復帰した女性。「またバリバリ働きたい」とやる気満々で職場にやってきたが、上司からかけられたのはこんな言葉だった。
「まあまあ。当分、戦力にならないだろうから。しばらくは、お客さんでいいよ」
おそらく上司としては「まだ赤ちゃんも大変だろうから、ゆっくり仕事に戻るようにして構わないからね」と言いたかったのだろうが、「お客さんでいい」「戦力にならない」と言われた方はどう感じるだろうか。
上司の真意をくんでくれる部下ばかりとは限らない。普通の感覚なら、せっかくのやる気がしぼんでしまうはずだ。「期待しているよ」「無理はするなよ」だけで十分なのだ。
■「伸びしろがあるから叱っているんだ!」
また、ミスをした部下を叱った後のこんなセリフもまずい。近年だいぶ減ってきたようにも思えるが、まだまだ叱る時の「締めの言葉」として使われている。
「俺は、伸びしろがあると思うから叱っているんだぞ!」
上司が伝えたいのは「期待している」ということなのだが、せっかくポジティブな気持ちを持たせる𠮟り方をしても、最後がこれでは叱った自分を正当化しているようで部下からしたら冷めてしまう。「伸びしろがある」と評価するのはいいことだが、「だから叱っている」と結びつけるのは良くない。これでは「俺がこう評価しているのだから、その評価に見合うように働け」というニュアンスが出てしまうのだ。
■部下にマウントをとらずにいられない上司
新製品のお試し会の会場選びを任された部下。
日程に余裕がないため、大勢の来客に対応できる会場を探すのは難航したが、どうにか3カ所ほど候補を見つけることができた。
しかし、この候補を社内でプレゼンしたところ、上司からは 「それだけ?」 の一言。日程がタイトななかで候補を探した苦労を考慮することもなく、上司は「〇〇はどうだろう」と自分が心当たりのある他の会場の名前を挙げた。
そんな会場は部下が探したなかにはなかったため、そう伝えると、上司は 「知らないんじゃしょうがないな。じゃあ、他の人に頼んでみるか」 と言い放った。
このケースでは、まず「それだけ?」というセリフは部下の仕事の数量への否定であり、ご法度だ。こんなことを言われたら、次からこの部下は会場の良し悪しは関係なく数だけ揃えてプレゼンをするようになってしまう。これは仕事の方向性としてまちがっている。
「他の人に頼んでみるか」もNG。「おまえより仕事ができて、信頼できる人が他にもいる」というニュアンスとして受け取られてしまう。これでは、部下はやる気をなくしてしまうだろう。部下に競争意識を植え付けようとこういう発言をする上司は、昭和の時代には多かったが、今となっては時代遅れ。心当たりのある上司は改めたほうがいい。
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本書では、部下のやる気を奪う「北風上司」と、部下のやる気に火をつける「太陽上司」の言葉が、さまざまなケースで対比されながら紹介されていく。ここで紹介したものは、いずれも「北風上司」のもの。
では、「太陽上司」は部下にどんな言葉をかけるのか。ビジネスシーンだけでなく家族への言葉がけにも通じる本書。自分の発言が相手をどんな気持ちにさせているのか。本書の内容に耳が痛い人は多いのではないか。
(新刊JP編集部)