「足腰」でも「記憶力」でもない!40代で始まる「老いの最初の兆候」
男女ともに平均で80歳前後まで生きる現代日本で、気になるのは、「何歳まで健康にやりたいことをやれる自分でいられるか」だろう。単なる寿命より「健康寿命」が気になるという人も多いはず。
何歳になっても明るくはつらつとしている人がいる一方で、ある年齢をすぎると一気に老け込んでしまう人もいる。できれば前者でいたいものだが、その違いはどこにあるのだろうか。そして、今50歳の人は60歳、70歳になった時の自分がどうなっているか想像ができるだろうか?今は健康かもしれない、でも10年後や20年後は、どこかがきっと、今よりも衰えている。それはどこだろうか?
◾️老いの最初の兆候は「足腰」でも「記憶力」でもない!
『うまく老いる 楽しげに90歳の壁を乗り越えるコツ』(樋口恵子、和田秀樹著、講談社刊)では、「老いる人」と「老いない人」の分かれ道として「意欲の減退」を挙げている。というのも、老いは足腰や記憶力の衰えからくるものではなく、「意欲」から始まるのだという。
サボっているのが楽ちんだと感じ始めたら、僕はもう老いの始まりだと思うんですよ。(P49より)
「還暦を過ぎて体が衰えたから、何をやるのも億劫になるのでは?」と思うかもしれない。しかし、人によっては体が衰える前の30代、40代から、意欲の衰えは始まっている。それが目立ってくるのが、体の衰えを感じ始める70歳くらいだというだけである。
◾️覚える気力がないから覚えられない
この「意欲の減退」は脳の前頭葉の老化によって起こるのだという。記憶力の衰えで老化を自覚する人が多いが、本書によると意欲が減退して「覚える意欲」が低下した結果、記憶力が低下していく。つまり覚える気力が失われていくから覚えられなくなるのだ。
これは記憶力だけでなく筋力や体力の維持にも同じことがいえる。意欲が減退したために、大事だとわかっているのに筋トレをしたり体力強化に取り組むのが億劫になってしまう。すべては「意欲」から始まっているのだ。
◾️老と直結する前頭葉をいかに鍛えるか
ならば、意欲の減退をもたらす前頭葉の機能を維持することが老化を防ぐために有効ということになる。本書はそのための取り組みについても紹介している。前頭葉は鍛えることができるのだ。
その一つが「ものごとを両面から考えること」。ニュースや誰かの考えに触れた時に、それを鵜呑みにするのではなく、批判的な視座を持って「別の味方」を探ってみることで思考の幅が広がる。知識を知識で終わらせるのではなく、自分の経験や思考を通して再検討していく行為は、前頭葉を大いに使っているのだ。
また、「考えを言語化してみること」も有効だ。本を読んだり映画を見るだけで終わるのではなく、その感想を言語化して、誰かと意見交換をしてみることも前頭葉を鍛えることにつながる。
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記憶力を鍛えたり、筋トレをすることももちろん老化の防止には役立つ。しかし、全ての根本にある「意欲の減退」に目を向けないことには、これらの取り組みが続かない。
本書では「老い」とどう向き合い、どう抗い、そしてどう受け入れるかについて、医師の視点から語られていく。健康で自分らしく生き生きと過ごせる時間を、いかに長く確保するか、という現代人に共通の課題について、新しい発見を与えてくれる一冊だ。
(新刊JP編集部)