コンビニATMでお金を下ろすのは本当にムダなのか?本当に身になる節約術とは?
いつも買っているコーヒーの値段が上がった。
駅前に新しいお店ができた。
円安が進んでいる。
このように、世の中は常に少しずつ動き、移り変わっていくもの。普段の生活からその変化をなんとなく感じ取ることはできるが、「数字」に注目することで、より具体的な手触りを得ることができる。数字から何かを考え、仮説を立て、検証してみることは、ビジネスで役立つ訓練であり、解像度高く世の中を見て損をせずに生きていくための一つのスキルでもある。
◾️コンビニのATMでお金を下ろすのは本当にムダなのか?
『なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか?』(平野薫著、ダイヤモンド社刊)は日常で見かける数字から、その背後にある事情や思惑を考えていく。
たとえばお金を下ろすときのATM。コンビニで下ろすと手数料を取られるから、少し遠くても銀行まで足を伸ばす、という人は少なくないはず。こうすることで110円の手数料を払わなくて済む。しかしこれは本当に節約なのだろうか?
コンビニと銀行が同じ距離なら、もちろん銀行でお金を下ろす方がいい。しかし、コンビニの方が圧倒的に近いなら、コンビニで下ろしたほうが得になるとも言える。
つまり「110円を節約するために何時間余計に時間を使ったのか」という問題だ。節約できる金額に対して、どれくらい時間を費やすのか、というタイムパフォーマンスに目を向けると、必ずしも「手数料を払ってコンビニATMでお金を下ろす」が無駄ではないことに気づくはずだ。
◾️自販機は減っているのに食品の自販機だけが増える理由
また、近年住宅地や街道沿いなどでよく見かけるようになったのが、ラーメンや餃子など、食品を扱う自販機だ。治安が良く、盗難などをあまり心配しなくていい日本は「自販機先進国」。さまざまなものを売る自販機がある。食品の自販機も以前からあったが、ここ数年でかなり増えた印象を持っている人も多いはず。
日本では、自販機自体は減少傾向にあり、2014年以降、前年比86%から99%の間で少しずつ減り続けている。そんな中で、2022年に前年比106%と大きく増えたのが食品の自販機なのだ。
そのきっかけとなったのは、ご存知のように、コロナ禍である。人と人との接触を減らすことが完全拡大の防止に有効、とされたことでテイクアウト需要が増え、その一環として自販機も活用されることになった。
店舗と違い24時間稼働させることができ、しかも外食から自販機を含めた無人販売への業態転換は「事業再構築補助金」の対象になるため、これを利用して食品の自販機を設置した企業が多いのだ。
◾️ビールメーカーが「ノンアルビール」に力をいれるワケ
若者のアルコール離れが指摘されるなか、近年ビールメーカーが力を入れているのが「ノンアルコールビール」や「ノンアルコールチューハイ」といったノンアルコール飲料だ。コロナ禍でアルコールの提供ができなくなったタイミングで認知が広がり、市場は拡大傾向にある。
ただ、これらの飲料はアルコールと比べると価格が安い。市場が広がっても、あまり儲からなそうに思えるかもしれない。
ただ、ここには「酒税」というからくりがある。350mlのビールにかかる酒税は63.35円。発泡酒や新ジャンルのビール系飲料には46.99円の酒税がかかっている。ノンアルコール飲料はどうかというと、当然0円である。
酒税を支払った後の利益を見ると、ノンアルコールビールは、通常のビールを上回る。若者のアルコール離れはメーカーからすると頭の痛い問題だが、ノンアルコールビールなどの認知が広まることは、大きなビジネスチャンスに繋がるとも言えるのである。
なぜ駅前の古びた靴屋さんはお客さんが来ないのに営業を続けられるのか?
なぜガソリン価格は地域によって違うのか?
なぜ花屋さんは廃棄覚悟で品揃えを充実させるのか?
本書では、日常で見かける光景の中の「不思議」にフォーカスし、数字を使ってその真相を読み解いていく。世の中の見え方が変わるとともに、世の中の動きがクリアに見えてくる一冊。これから社会人になる人や、若手ビジネスパーソンが読むと、身になる発見が得られるはずだ。
(新刊JP編集部)