老いを実感しはじめた頃に読むと沁みる本とは
「人生100年時代」を前向き、アクティブに生きるために、中高年となった人たちが自分に何ができるのか考えたり、まだまだ多くの選択肢があるとモチベーションを高めるために必要なのが読書だ。
ただ、「どんな本を読めばいいのか」というのは簡単そうで難しい問いである。明治大学教授の齋藤孝氏が「この1冊を読まずに死ねるか」というような作品を提案するのが『人生最後に後悔しないための読書論』(齋藤孝著、中央公論新社刊)だ。
■中高年からの人生を豊かにしてくれる名著の数々
本書では、文豪・谷崎潤一郎の「変態」な記録、大自然と戦う美しい高齢者を描く『老人と海』、江戸時代の「健康本」、世界「三大幸福論」の魅力など、文学や哲学からマンガまで古今東西の作品をもとに、人生100年時代を充実させるヒントを紹介する。
年齢を重ねていくと、若い頃のようには身体に無理が効かなくなる。すぐに疲れたり、体調を崩したり、あちこち痛み出したりするもの。それによって心が塞ぎがちになることもある。そのプロセスと再生への心構えを綴ったのが、森村誠一氏の『老いる意味』(中公新書クラレ)だ。「余生」が「余った人生」ではなくなり、その後半戦をどのように意味のある過ごし方にしていくか。この本では、森村流の「老い」との付き合い方について、さまざまな角度から考えを述べている。たとえば、欲望について。年齢を重ねるほど衰えがちになるが、生きていく上ではビタミンと同じようなものであり、「人間枯れたらおしまいだ」という執念が必要であり、欲望を持ち続ければ艶がなくならないと森村氏は述べる。
また、頭がしっかりした人には、何か困難に直面したときにも、冷静に対処していく力がある。読書をはじめとする知的な訓練によって鍛えられた知性が、生活を支える力になるということだ。人間には元に戻ろうとする力、心身ともに正常に保とうとする力があるが、これには個人差がある。その差は知性によって生まれると、著者の齋藤氏は考えている。日頃から本や新聞を読み、自分で考えたり、想像したりする習慣がある人ほど、錆びない知性を身につけられる。今日の読書が明日の自分をつくるということだ。
人生の後半戦を豊かにするためにも、本書から今の自分に合った本を探してみてはどうだろう。本書で紹介される本を素直に読んでみるのもよし、「こんな本じゃなく、もっといい本を探してやる」と本探しの海に飛び込むのもよし。どちらも本書の楽しい使い道である。
(T・N/新刊JP編集部)