大自然が人間に牙を剥く…実際にあったアウトドアの死亡事故
登山やキャンプ、海水浴、川遊び、釣りといったアウトドアのレジャーにはかねてから好事家が多かったが、コロナ禍でさらに人気に拍車がかかった感がある。
雄大な山や緑の木々、そして海の波音や川のせせらぎに触れればリラックスでき、心の癒しになる。一方で、大自然とはそもそも厳しく、人間がいまだ完全には制御できない。不慮の事故と隣り合わせだということもわかっておくべきだろう。
では、大自然はいかに人を殺すのだろうか?ここでは『これで死ぬ アウトドアに行く前に知っておきたい危険の事例集』から、実際にあった事例を紹介する。
■悪天候時のテント泊で起きた悲劇
「風に飛ばされて死ぬ」と聞いてどんなシチュエーションを想像するだろうか。飛ばされてしまいそうな強風は台風などで経験するものだが、それはあくまで比喩であり、本当に飛ばされてしまうことは、アウトドアの際も想定しないのではないだろうか。
しかし、北アルプスの唐松岳に登頂し、尾根上にテントを張った男性二人が、強風にテントごと飛ばされて斜面を滑落する事故がかつてあった。二人のうちひとりは雪を掘って一時退避し、警察に救助を要請したが、もう一人は不幸にも亡くなってしまった。
悪天候時の山岳地の強風は強烈。行動時であればとっさに耐風姿勢もとれるが、テントの中にいてはそれもできない。悪天候時は行動を控えるなどの対策が必要なのだ。
■体を貫通する「ダツ」は光に突進する
また、自然には多様な生き物がいる。海ではサメに襲われるかもしれないし、山では熊やイノシシに襲われたり、毒蛇に噛まれるかもしれない。いずれも襲われた人が死亡した事例がある。
そんな危険な生物のなかでも、衝撃的なのが「ダツ」。ダツは全長1mほどの細長い魚で、鋭く尖った長いくちばしと鋭い歯がある。光に向かって猛スピードで突進する習性があるため、夜のダイビングや釣りでは、ライトを水面近くで水平に照らすことは絶対に避けなければならない。
突進してきたダツが体に突き刺さって失血死した事例や、首を貫通されて重傷を負った事例が過去にある。
■カタツムリやナメクジに潜む意外な脅威
しかし、サメや熊、イノシシ、上述のダツのように、見るからに危険な生き物だけでなく、とても死に結びつきそうにない生き物も時に危険をはらむこともある。
2000年6月に、カタツムリやナメクジに素手で触れてしまったと考えられる沖縄県の小学生が広東住血線虫による髄膜脳炎で死亡した。広東住血線虫はネズミの肺動脈に寄生し、幼虫は中間宿主となるカタツムリやナメクジなどに寄生している。これらに素手で触れると幼虫が体に入り、脳や脊髄に移動して髄膜脳炎を起こすことがあるのだ。
アウトドアの際に限らず普段の生活でもカタツムリやナメクジには素手で触れないこと。触れてしまったらよく手をあらうこと。野菜や果物に付着することもあるので、生で食べるときは流水でよく洗い流すことが大切だ。
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アウトドアが楽しいのは安全であればこそ。どんなところに危険が潜んでいるかを知っておくことで、楽しみはより大きくなるはずだ。
(新刊JP編集部)