だれかに話したくなる本の話

インフルエンザなのに出勤してくる同僚…法律的にはアウト?

働き方の多様化が進む日本だが、多様化する働き方に法律が追い付いてきているかというと、決してそうとはいえないのが現状だ。というのも、法律が社会を規定する一方で、社会の変化に合わせて法律が作られるケースも多いからである。

となると、職場で起きる問題や、上司や同僚の言動について、明確に法律違反と言い切れない「グレーゾーン」が常につきまとう。こうしたグレーゾーンを判別するためにも、何がアウトで何がセーフなのかを知っておくことは、働きやすさに直結する。

たとえば、こんな事例はアウトなのだろうか、それともセーフなのだろうか。

■インフルエンザなのに出勤する同僚は法的にアウトか?

『職場問題グレーゾーンのトリセツ』(村井真子著、アルク刊)は職場で起きうる「これって問題じゃないの?」ともやもやする事例を紹介していく。

たとえば秋から冬にかけてのインフルエンザが流行しやすい季節。コロナ禍以降は「体調が悪かったら休む」があたりまえになっているが、かつてはインフルエンザにかかって発熱していても出勤してきて、それを武勇伝のように語る人が少数ながらもいた。

周りからしたら迷惑きわまりない話で、「これって問題ないの?」と誰もが思っていたはずだが、本書によると社会人に対してインフルエンザなどの感染症について出勤を禁じる法律はないのだそう。

だから、インフルエンザにかかっているのを知りながら出勤しても、行政法規違反にはならないのだが、一方で感染症に罹患している労働者を就労させ、周囲に感染リスクを拡大させたということで、会社が労働安全衛生法上の安全配慮義務違反に問われる可能性がある。そのため、感染症にかかっている可能性がある社員に出勤停止を命じることを就業規則で定めている会社もある。

社内で感染症が広がってしまったら、企業活動に大きな支障が出てしまう。インフルエンザをおして出勤することは誰のためにもならないのだ。

■自社ブランドの買い取りがノルマに…これってOKなの?

アパレル業界では、ショップ店員が自社ブランドの服を着て接客することで、ある種広告塔の役割を果たすことが多い。そのため、スタッフは社割でアイテムを買えたり、自社の服を買うために一定額が支給されることもある。

ただ、それでも自社ブランドの服を着て働くことが「ルール」になってしまうと、いくら割引で買えたり手当があっても服代が生活を圧迫するようになってしまう。このルールのせいで苦しい生活を強いられている人がいるとしたら「どうにかならないの?」と思うはずだ。この問題、法律的にはどう考えればいいのだろうか。

アパレルブランドの例でいえば、自社の服を従業員が購入することがノルマとして課されていて、なおかつ割引制度や購入費用の支給制度がない場合は労働基準法違反にあたる可能性が高い。

アパレルブランド以外に目を移すと、クリスマスケーキや恵方巻などの販売で、ノルマが達成できなかった分をスタッフが自腹で買い取るケースが見られる。この買取も強制的に行われているのであれば法律違反にあたる可能性が高いという。

副業を会社が認めてくれない。
自分の性自認と異なる性別の服装が苦痛。
子どもの発熱で欠勤連絡をしたら、ペナルティがあると言われた。

本書では現代の職場で起こりうる様々な問題に対して、どんなケースなら法的にアウトなのか、どこに相談すればいいのか、どんな解決法があるのかについてアドバイスしてくれる。

自分の職場をよりよいものにするために、そして自分自身の働きやすさのために、一読してみてはいかがだろう。

(新刊JP編集部)

職場問題グレーゾーンのトリセツ

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