【「本が好き!」レビュー】『希望の吐息』ルンルン著
提供: 本が好き!自分や家族が病気に罹ったときや心身の不調に悩んでいるとき、「治すこと」にこだわり過ぎていないだろうか。治すために我慢が必要な場合もあるが、そのときの体や心が「心地よい」と感じることを取り入れるのも重要であると、本書を読んで気付いた。
この物語では呼吸法とマッサージを通して、トラック運転手として働く主人公と、うつ病を長く患う妻の心と体が回復してゆく。
テニスコーチである著者は、自身が自律神経の不調に悩んだ経験から東洋思想に基づく体質改善などを学び、大学教員を経て現在はプロテニスコーチと研究とを両立。
本書は初の小説とのことだが、テーマが明確で、伝えたいことが絞り込まれているため、とても読みやすい。
50ページほどの短い作品で、「小説が苦手な人でも自然に読める」「体験型の小説」というキャッチコピーの通り、自分のペースでゆっくりと心に落とし込み、清々しい読後感を味わうことができる。呼吸法やマッサージは作中で紹介されているので、すぐに実践できるのも嬉しい。
また、短い作品の中で一つ一つの言葉が印象的でもあった。
私が好きになった言葉はこちら。
『誰かを救う言葉は、何度伝えてもいいのだ。』
これは、妻を気遣う主人公が自分に言い聞かせる一言だが、あとがきまで読むと、著者自身がいつもこのように考えているのだと分かる。
著者の文章をもっと読みたいな…と感じながらの本編読了後、あとがきにも素敵な言葉があり、読後感はより充実したものになった。
呼吸法やマッサージの効果には個人差があるかもしれないが、この本から得られることは決してそれだけではない。自分自身と大切な人が、どうしたらより良くなるか、互いに喜べるか、希望が見えるか…。
大切な一人に届くことを願って生まれた作品だからこそ、多くの人の心を動かすのだろうと感じた。
(レビュー:ぱるころ)
・書評提供:書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」