誰でもできる「一流アスリート」のプレッシャーへの備え方
スポーツのトップアスリートが強烈なプレッシャーにさらされながらも活躍している姿を見ると、彼らは一般人とはかけ離れたメンタルの持ち主のように思える。
どの世界でも「一流」と呼ばれる人は、どんな場面でも自信満々で、プレッシャーなど感じないかのようにふるまっている。だが、本当にそうだろうか?
彼らとて一人の人間。プレッシャーに委縮することもあるし、練習をする気が起きないこともある。自信が失われることもある。だが、彼らはそれに抗う術を知っている。
『メンタルトレーニング大全』(坂井伸一郎著、アルク刊)は一流を一流たらしめている心の整え方を解説。モチベーション管理や自己理解、他者理解まで、自分を高め他人に惑わされない心の作り方や物事のとらえ方、考え方を明かしている。
■一流アスリートはプレッシャーとどう向き合っているのか
自分を過小評価したり、あるいは過大評価してしまうことは仕事でもスポーツでも失敗のもとになるし、プレッシャーを感じやすくなる原因になる。今の自分を客観的に評価することが大切なのだが、これは実は難しい。
ただ、「数字」で自分を表現することを覚えておくと、ある程度自己認識と実際の自分の状態や実力との差は縮まる。本書ではそのための取り組みとしてあるスポーツチームの選手たちの習慣を取り上げている。
彼らは起床時にその日の自分の状態を点数化して記録する。ある日は「78点」、翌日風邪気味だったとしたら「40点」といった具合である。
これ自体はあくまで自己認識であり、客観性はない。ただ、これを続けることで、以前の自分との比較ができる。半年後にどうも調子が良くないと思った時があっても、半年前の点数を振り返ってみると案外悪くないことに気づいたりする。逆に、すごく調子がいいように思えても、過去の自分と比較するとさほど変わっていないことに気づき、自分を戒めることもできる。「いつも通りやっている」という思い込みや、「少し実力がついてきたかも」という根拠のない希望的観測を排除できるというわけだ。
また、一流アスリートほど「練習のための練習」をしないと言われている。毎日「本番」のつもりで練習することで、いざ本番になっても冷静に自分のやるべきことができる。練習からいい意味での「慣れ」を作るのである。
プレッシャーに関しては、自分に厳しすぎるのは逆効果なのだそう。そもそもプレッシャーとは「いい結果」を求める時に生じる心身の反応である以上、「いい結果」のハードルを上げすぎるとその分プレシャーも高まる。
ただ、ハードルの高さにかかわらず、プレッシャーは常に付きまとうものでもある。絶対になくならないものであり、完全にはコントロールできないものだと理解するだけでもプレッシャーの感じ方は変わってくる。
◇
ここではプレッシャーとの付き合い方を紹介したが、本書では他者との向き合い方やモチベーションを保つ方法、やる気が起きない時の対処法など、社会人として身に着けておくとメリットの大きいメンタル管理の方法が網羅的に紹介されている。
他人からの厳しい一言に落ち込んでいる時、タスクが積み上がり過ぎて心が折れそうな時、がんばってやっているのに結果が伴わない時。どんな人にも心に負荷がかかる瞬間がある。そんな時に自分を立て直す助けになってくれるはずだ。
(新刊JP編集部)