60歳から「文章を書き続ける」ために大切にすべき土台とは?
長寿社会の今、60歳から人生の後半戦が始まるといっても過言ではない。そんなタイミングで、これからは組織の一員ではなく、自分の個性を活かしたことを始めてみたいと思うこともあるだろう。
その際、文章を「書く」ことを改めて始めてみるのは一つの手段だ。そして、書くことで半生を見つめ直すと、今後どう生きるかが見えてくるかもしれない。
『60歳からの文章入門 書くことで人生は変えられる』(幻冬舎刊)では、毎日新聞客員編集委員の近藤勝重氏が、「何を書けばいいかわからない」という初心者向けに、「話題やテーマを決める→文法や構成を学ぶ→自分らしい表現力を養う」の3部構成で、文章力アップのコツを解説する。
■文章を書く土台は「自分の体験」
しかし、「文章を書く」といっても、何をどのように書いていいか分からないという人が多いのではないだろうか。
文章を書く上で大切なことは、「『思うこと』より『思い出すこと』。論よりエピソード。要は自ら体験したネタであれということ」だ。
その一つである「思うこと」とより「思い出すこと」について触れよう。
「思う」と「思い出す」は違う。辞書を引くと、「思う」とは、胸の中で判断すること。「思い出す」とは、忘れていたことや昔のことを頭に思い浮かべることとある。
「思う」は体験ではなく単に胸の中での単純な一つの判断。一方、「思い出す」は、自らが関わった体験や出来事などをともなう言葉だ。
体験した大抵のことは、脳の言語、記憶などに関する中枢の側頭葉に長期保存されるので、思い出せばその体験を引き出すことができる。
体験を書けば文章も一般的な説明ではなく、描写性が増し、読む人の印象にも残る。また、同じ体験をした人がいたとしても、自分は自分、他者は他者だ。興味の持ち方や感じ方は人それぞれなので、自分と他者が同じ文章を書くことは考えられない。
文章は「思う」より、「思い出す」こと。
これは60歳からの文章術の根幹を成すことになる。
些細なことや小さなことでも、気持ちをセーブするのではなく、素直に感動し、驚く。それが文章を書く土台となるのだ。
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人生の処方箋やエッセイ、自分史でも、何か書きたいと思ったとき、文章力があれば書くこともよりいっそう楽しくなるだろう。
60歳から、書くことを楽しみの一つとしてはどうだろう。
(T・N/新刊JP編集部)