作家・曽野綾子の老後の日常の気構えと幸福の極意とは
『遠来の客たち』『神の汚れた手』など、多くの本を刊行し、90代を迎えた作家・曽野綾子氏。夫・三浦朱門氏が亡くなって5年、ひとりとなった老後をどのように豊かに暮らしているのか。
『人生は、日々の当たり前の積み重ね』(曽野綾子著、中央公論新社刊)では、自分で動けるうちは好きな花を植え、野菜を育て、料理を作り、しっかり食べ、読書をし、体をちゃんと動かしながら一日一日を過ごしていきたいという曽野綾子氏が、老後の日常の気構えと幸福の極意を綴る。
■老いに寄り添うペットとの生活
夫が亡くなって4ヶ月ほど経ったとき、曽野氏は雄の仔猫を飼うことになった。淋しいからペットを飼ったのではなく、夫がヘソクリとして引き出しの中に隠していたお金を見つけて、そのお金で直助という雄猫を買ったのだ。
20年ほど前にも猫を飼っていた時期があり、曽野氏の母はペットを布団に入れることを許さなかった。汚れやもしかすると虫をうつされるかもしれないし、そんなだらしない暮らしをしてはいけないからだった。
しかし、母も夫も亡くなった今、監督される人もいないので、思うままに暮らし、これまで味わったことのない自由の境地だという。そして、直助の後に、雪と名付けた白い長毛の雌の猫も飼うことになる。
2匹の猫と過ごすようになり、一人暮らしにはペットは大切だと思うようになったという。最近は体力がなくなったので、一人でいると朝いつまでも寝床にいたいと思うようになった。しかし、猫のためにどうしても起き上がって、ご飯をやり、飲み水を取り換え、ウンチ箱をきれいにしなければならない。
与えねばならない仕事があるのは幸せなこと。それがないと「自分がしてもらう」だけの立場になり、運動能力、配慮、身の処し方、すべてが衰えてしまう。
高齢化社会となった今、今後も老後をひとりで暮らす人も増えるだろう。自分がその暮らしをすることになったとき、どのように日々を過ごせば豊かに生きることができるのか。ベストセラー『夫の後始末』のその後を綴った本書。曽野氏の生き方や考え方から、そのヒントを得られるはずだ。
(T・N/新刊JP編集部)