【「本が好き!」レビュー】『深夜プラス1〔新訳版〕』ギャビン・ライアル著
提供: 本が好き!名作のガンマン小説であります。私は旧版を持っており、それを何度も読んでいるのですが(これが読む度に面白い!)、新訳版が出たということなので図書館から借りて来てまたまた読み直してしまいました。
はい、今回も大変面白く読み直すことができました。
新訳にも大きな問題は無くスラスラ読めたのですが、一点だけ挙げるとすると、旧訳では『ハーヴェィ・ロヴェル』となっていたガンマンの名前が新訳では『ハーヴィー・ラベル』となっており、元特殊作戦最執行部員(ビジネス・エージェント)の名前が旧訳では『カントン』だったのが新訳では『キャントン』となっているのが最初のうちは若干の違和感があったこと位でしょうか。
ストーリーは大変有名なので詳述は避けますが、簡単にまとめちゃうと、大富豪のマガンハルトをフランスからリヒテンシュタインまで護送してくれとの依頼を受けたキャントンとラベルが、敵のガンマンたちや警察の追撃を退けつつ目的地を目指すというお話です。
このミッション、のっけから波乱含みであり、移動用の車を運搬してきた運転手が車内で殺されているわ、マガンハルトは依頼では聞いていなかった秘書だというヘレンという女性を連れてやってくるわ(このヘレンが行く先々で勝手に電話をかけ続け、情報を漏らしているのではないか? との疑いが生じます)、マガンハルトを待ち合わせ場所の海岸に連れて来た船の乗組員たちが早々に逮捕されてしまうわで、どこかで情報が洩れていると疑われるどうにも胡散臭い状況なのです。
そして一番の問題は、ヨーロッパNo.3と言われているガンマンのラベルが実はアル中だったという点でしょう。ミッションが長引くに連れて我慢できなくなり、ラベルは途中で遂に酒を飲み始めてしまうのです。まあ、飲まないと手が震え出して使い物にならなくなるのでやむを得ない面もあるのですが、かと言って飲み始めるとこれまた反応が鈍くなって使い物にならなくなるし……。
加えて、このミッションには時間制限があり、そのリミットまでに目的地につかなければ意味がなくなるという点も問題になってきます。
物語の後半になってくるとやや都合が良いかなぁと感じる点も無くはないのですが、それでも全編にわたり緊張感が持続し、手に汗握りながら一気に読ませてしまう力のある作品であることは新訳を読んでも変わらない感想でした。
やっぱりこれは名作だわと改めて認識したのであります。
この作品、タイトルがちょっと変わっていますよね~。私、これまで何を読み飛ばしてきたのか、タイトルがどういう意味なのか今回の読み直しに至るまで気付いていなかったのです。なんということでありましょうか。タイトルの意味はラストでちゃんと分かるように書いてあるというのに!
今回の読み直しの最大の収穫は、タイトルの意味がちゃんと分かったことかもしれません(苦笑)。
まだこの傑作を読んでいないという方は、新訳版も出たことですし、この機会に是非お読みになることを強くお勧めします。とにかく面白くてカッコいい作品なので多くの方にご満足いただけるのではないかと思います。
(レビュー:ef)
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