【「本が好き!」レビュー】『空をこえて七星のかなた』加納朋子著
提供: 本が好き!ずっと追いかけている作家さんです。 初期の作品は日常の謎に分類され、ミステリー作家のイメージが強いのですが、ミステリー以外の作品も当初から書いています。 ミステリーかどうかに関わらず、設定を隠し気味のまま物語をすすめ、連作にしていくスタイルは初期のころから多いですね。 この作品も同じでした。
題名の七星とは、ななせという人の名前です。 題名から連想される通り、星や宇宙が題材になっているんですね。 第一話、南の十字に会いに行く。 七星、南の島へ行くぞといきなりパパが言い出しました。 いきなりなに、と聞くと、パパは少しおかんむりです。 小学校を卒業するというのに、パパはいまだに小さい女の子みたいに接してくるから、七星とずれてしまうのです。
石垣島だよ、春休みの卒業旅行だよとパパは言います。 去年までは、家族旅行といえばママも一緒で、企画力や行動力が抜群のママに合わせて、七星もパパも満足でした。 どうやら今年は、ママがいないようなのです。 読んでいて、ざわりという気配が胸に浮かんできます。
物語は進み、石垣島に到着する頃には、一人のおばあちゃんと話すようになります。ツアーなので、行くところも似通ってきて、 またお会いしましたねという感じです。 あやしいサングラスの男とか、仕事で来たという元気そうな女の人とか、にぎやかしも加わってきます。
最初は違和感があったのに、話してみると実はいい人でしたという著者のお好みのパターンがあちこちに詰まっています。 そして連作短篇の手法で、最後にうわーっとつなげて驚くというのも。
うまく出来ているのは理解しつつ、既視感があるのは著者の作品に親しみ過ぎているのかもしれません。 第2話、第3話と進んでいきますが、加納作品の特徴満載でした。 ただ、最近の作品にはいじめや不幸すぎる事故が入ってくることがあり、気になっています。最後のハッピーエンドとのバランスの取りかた なのでしょうが、それがいいかは難しいところですね。
ともあれ、作品全体は優しい世界なので、好きな人は多いと思いますよ。
(レビュー:たけぞう)
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