【「本が好き!」レビュー】『水曜日の手紙』森沢明夫著
提供: 本が好き!祐太郎さん主催のカドブン夏フェア2022を新着書評で埋め尽くせ!に参加すべく、リストを眺めながら、未読作品をチェックして見つけた本だ。
初めましての作家さんではあるが、先行レビューをいくつか読んでいたので、イメージはつかんでいたつもりだった。
その「郵便局」に宛てて、水曜日の出来事を記した手紙を送ると、かわりに知らない誰かが水曜日の出来事をしたためた手紙が届くというちょっと変わったプロジェクトがあって、その郵便局宛てに思い切って手紙を書いた人や、そこから手紙を受け取った人が、少しずつ変わっていく……というハートフルストーリーっていう感じの。
読みやすそうだし、そこそこいい話に違いない…と、軽い気持ちで手に取って、水曜日の手紙風にレビューを書くのもいいかも、などとあざといことを考えたりもした。
だけど、実際に読んでみると、高校時代の友人とのランチで格差を実感し、舅姑問題や夫の仕事がうまくいっていないこと等々悩み多き女性の書いた手紙とか、夢を諦めきれないが堅実な生活も捨てられない30代の男性の手紙とか、そもそも手紙って、本当のことが書かれているとは限らないのよね……という話で。
ふーん。そうくるのねってちょっぴり冷めた気持ちで読んでいたのだ。途中までは。
でもこの小説の本当のあざとさは、そうした手紙の中にあるのではなくて、水曜日郵便局の方にあったのだと知ったとき、まんまとのせられて、すーっと涙をこぼしたりしてしまったわけ。
全く私ったら、チョロいよね。
我ながら嫌になっちゃう。
読みながら、そういえば岬の先の喫茶店を舞台にした小説がなかったっけ?
と、読んでいないながら知った気になっている別の小説のことを思い浮かべる。
検索してみると……あらやだ、やっぱり同じ作者の作品じゃない。
本当に私という読者はチョロいわね。
そう思いつつ、『虹の岬の喫茶店』を読みたい本のリストに加えた。
(レビュー:かもめ通信)
・書評提供:書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」