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「失敗しても楽しむ」 阪神タイガース矢野監督のポジティブすぎる考え方

2軍監督時代にウェスタンリーグで優勝を果たし、その後2019年から阪神タイガース1軍監督に就任した矢野燿大氏率いる阪神は昨シーズンまで3年連続のAクラス入り。「失敗しても楽しむ」「こんなかっこいい大人になりたいと子どもたちの見本になること」という矢野氏のポリシーで阪神は近年好成績を残している。

「かっこいい大人になる」をテーマに、作家・幸せの翻訳家のひすいこたろう氏とメンタルトレーナーの大嶋啓介氏が、矢野野球の秘密に迫るのが『昨日の自分に負けない美学』(ひすいこたろう、矢野燿大、大嶋啓介著、フォレスト出版刊)だ。

■阪神タイガース・矢野燿大監督の「仕事の流儀」

ひすい氏と大嶋氏が、矢野氏を取材するうちにわかった矢野氏の魅力は、失敗を感動に変えるマジックだという。失敗からヒーローを生み出す心のあり方だ。そこで、矢野氏が失敗から学び、失敗を感動に変える3つのポイントを挙げている。

1つ目は、誰しもがすごい可能性があるということを知ること。矢野氏自身、エリートコースを歩んでいないと述べる。なので、失敗した選手を見たときも「あぁ、俺らもそういえばそうだったよな」と思えるので、選手の可能性を信じてあげられるという。

2つ目は、聞くこと。うまくなるためにどうするか、その答えを自分で出したときこそ、それを行動に移せて変わっていける。頭ごなしに言われた正解より、自分で出した答えのほうがたとえ未熟な答えだとしても、次の成長に早くつながる。なので、矢野氏はじっくり相手の話を聞くことに心掛けている。

3つ目は、結果はどうなるかわからないので、結果だけでなく、その過程をどれだけ見てあげるか。矢野氏のプロ野球経験から、上手い選手が残っているのではなく、練習をやっている選手が最後は残っているという。うまくいっていないときに、どういう行動をしているかが本当の強さ。そこをちゃんと見るという。矢野氏自身もコツコツ派で、目の前の毎日を積み重ねていった結果、少しずつ少しずつレギュラーが近づいてきて、数字がついてきたのだ。

失敗した選手が次のヒーローになることが多い阪神。結果だけでなく、失敗からの過程を矢野氏が見ていてくれることが、選手が腐らずやる気を出し、再び活躍する矢野マジックの秘密なのだろう。

お金や効率、結果だけを追い求めるあまり、生き方、その美学を忘れてしまいがちになる。勝ち負けに真剣勝負で「楽しむ」という言葉はタブーとされてきたプロの世界で、「失敗しても楽しむ」野球を掲げ、優勝を目指す矢野氏の考え方は、プロ野球だけでなく、どんな業界にも通じるところがあるはずだ。

(T・N /新刊JP編集部)

昨日の自分に負けない美学

昨日の自分に負けない美学

2軍監督時代に優勝し、その後1軍監督で3年連続Aクラス。
2021年シーズンは5厘差での悔しい思いをした阪神タイガース。
超積極野球で盗塁数3年間リーグ1位を記録し、失敗しても楽しむという野球界ではタブーとされるプレーを続けた矢野野球の秘密に迫ります。

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T・N

ライター。寡黙だが味わい深い文章を書く。SNSはやっていない。

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