だれかに話したくなる本の話

幸福度を上げるための「読書」のススメ

国連の関連組織が毎年公表している「世界幸福度ランキング2021」で、日本の順位は約150カ国中56位。最上位はフィンランド、デンマークなどの北欧の国が並び、先進国各国も日本よりずっと上の結果だ。では本当に、北欧や先進国各国よりも日本人は幸福を感じていないのか。

日本人を世代別で見てみよう。内閣府が2019年から行っている「満足度・生活の質に関する調査」の根幹となる「総合主観満足度」によれば、40~64歳の中高年層が最も生活満足度が低い。
しかし、それより上の高齢者世代は極端に高い結果が出ている。このデータを見ると、日本人は若いうちからある程度の不満を抱えながら年齢を重ねていき、働き盛りの世代でそれがピークに達する。そして、リタイア後は幸福度が高くなっていく傾向が見えてくる。

つまりそれは、幸福度の低い中年層は今の時期さえクリアできれば、幸せな老後を送れるということだ。

中高年層が抱く不幸感を払拭するために参考にしたいのが、バートランド・ラッセルの『幸福論』。
そんな『幸福論』を現代の日本の文脈にわかりやすく読み替えしながら解説した一冊が『60代からの幸福をつかむ極意』(中央公論新社刊)だ。本書では明治大学教授の齋藤孝氏が、定年後の不安感をポジティブ転換するコツを紹介している。

■幸福の芽を見つけるために必要なこと

幸福度を上げるためには、日常の中から幸福の芽を見つけることが必要だ。

ラッセルは、外部に対して持つ「熱意」の重要性を強調する。内に凝り固まってしまっては枯渇してしまう。そうならないように、外部からさまざまな材料を取り込み、笑ったり、怒ったり、感動したりすることが人間の幸福感につながると述べる。

ラッセルが推奨しているのが読書だ。読書は、本を開くだけで簡単に世界の森羅万象を知ることができる。場所も時間も選ばず、自分一人でまったく無縁だった分野と接点を持てるのだ。
読書に対して必要なのは、「読んでみようか」という少しの熱意と好奇心だけ。すでに読書が習慣化している人は、その時点で幸福に向けた趣味を一つ持っているということになる。
幸福の芽を見つけたいならば、読書から始めてみるのもいいだろう。

ラッセルの『幸福論』が説くのは、自分の内面を掘り下げるのではなく、関心を外部に向けるということだ。
実はラッセル自身も「年齢を重ねるごとに幸福になった」と述べている。何か不満や不安を抱えている人は、ラッセルの生き方・考え方から幸福な人生を送るヒントをもらえるはずだ。

(T・N/新刊JP編集部)

60代からの幸福をつかむ極意-「20世紀最高の知性」ラッセルに学べ

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T・N

ライター。寡黙だが味わい深い文章を書く。SNSはやっていない。

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