【「本が好き!」レビュー】『めぐり逢いサンドイッチ』谷瑞恵著
提供: 本が好き!サンドイッチは子供の頃から好きで、遠足のお弁当はいつもサンドイッチだったのを思い出す。
今ではもっぱらコンビニのサンドイッチですが、こんなお店があったらいいなと思うほのぼのした話だった。
大阪西区の公園の前にあるサンドイッチ屋「ピクニック・バスケット」は姉の笹子が3年前にオープンしたお店で、妹の蕗子はそれまで勤めていた会社が倒産したこともあり半年前から姉の店で働いていた。
煉瓦色の壁に白いドア、赤い屋根の可愛らしいお店で、小さなイートインスペースがありサビ猫が丸くなって寝ている椅子が置かれている。
口コミでお客が増えていって常連客がついているようなお店だ。
そんなお店を切り盛りする姉妹と、常連客たちやパン屋さんの日常が描かれていきます。
最初の話に出てくるのはタマゴサンドでした。
タマゴサンドを買ったOL風の客が、それをそのまま公園のゴミ箱に捨てていったという話を常連のお客さんに聞かされて理由が気になる姉妹だった。
このお店のタマゴサンドは玉子焼をサンドイッチにしたもので、ゆで卵のマヨ和えと思って買ったら違ったから捨てたんじゃないかという説が有力になる。
タマゴサンドといえばマヨ和え一択で、玉子焼のタマゴサンドは食わず嫌いですが、笹子が丁寧に作るタマゴサンドを見ると食べてみたくなる。
そこから家庭の玉子焼の味の話になる。
母の玉子焼はタマゴに牛乳と砂糖多め、お塩ちょっとで作るのでかなり甘い。
自力で作ったことがないけど、甘い玉子焼を懐かしく思い出した。
タマゴサンドを捨てていったお客さんにも玉子焼にまつわる過去があったが、イースターに便乗していろんな種類のタマゴサンドを作ることで過去の嫌な思い出を上書きする話でした。
他にもローストチキンのサンドイッチや、カレーのサンドイッチ、コロッケサンド、ハムキャベツとそれぞれサンドイッチに絡んだストーリーが語られていきます。
食べるとなぜか懐かしい味のような気がするサンドイッチですが、やはり具材の分量やパンの厚み、具材にあわせるペースト、隠し味などこだわって作っているそうだ。
ハムキャベツの隠し味がハチミツというのは真似してみたい。
家族の思い出や絆がつまった食材を、パンがなんでも包み込んでくれる話だった。
(レビュー:DB)
・書評提供:書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」