だれかに話したくなる本の話

【「本が好き!」レビュー】『ショローの女』伊藤比呂美著

提供: 本が好き!

イギリス人である夫と3人の娘と約20年間アメリカ、カリフォルニアで暮らし、熊本に住む父母の遠距離介護で頻繁に日米を往復する日々を送り、両親が亡くなり、そして夫を看取ったあとに、早稲田大学から仕事への誘いが。

娘たちが暮らすカリフォルニアを離れ、熊本で一人暮らし。 早稲田へ授業をしに、東京-熊本とを毎週行き来するハードな日々。

東京滞在時にいつも泊めてもらう枝元なほみとのやり取りや、コロナ禍でオンライン授業を受ける早稲田の学生たちへの思い。 植物とワンちゃんと猫ちゃんにかこまれた暮らしや、ご近所付き合いについて。 老い行く体は悲鳴を上げつつも、一人暮らし、漠然とした孤独な生活の中で小さな楽しみを見つける日々のつぶやき。

こんな風に歳をとれたらなと、くすっと笑えたりしんみりしたりのエッセイでした。

いや、しかし本当にパワフル! 衰えや老いについて包み隠さず、弱音も吐きつつ、でもやっぱり普通の人よりずっとパワフルだわ、と。

いずれかわいい子供もそれぞれの人生を歩んでいくのは当たり前で、そのことを幸せなことと思いつつも、両親や夫を看取り、子供が独り立ちして、やっぱりそこには孤独がやってくるし、それは避けられないこと。

ならば、その孤独も楽しまないと。 老いて衰えていく自分を悲しんでいても、笑い飛ばしても、どちらにしても老いや衰えは止めることはできないのだから。

だったら笑って歳をとりたいいな、と。 やだなー、もうなんでこんなしんどいのよ、と愚痴りながら、

いやしかし、瓶のふたがなかなか開けられないとか、おんなじ!と思える話がちょくちょく出てきて、えー、やだー、もう私、ショローに近いわけ?!と愕然としつつ、来る老後に備えて筋トレに励み、プロテインを今日も飲み干す私は、こんなショローの女になりたいなと思うのでした。

(レビュー:yuko

・書評提供:書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」

本が好き!
ショローの女

ショローの女

米国人の夫の看取り、20余年住んだカリフォルニアから熊本に拠点を移したあたしの新たな生活が始まった。

週1回上京し大学で教える日々は多忙を極め、愛用するのはコンビニとサイゼリヤ。自宅には愛犬と植物の鉢植え多数。そこへ猫二匹までもが加わって……。襲い来るのは台風にコロナ。老いゆく体は悲鳴をあげる。

この記事のライター

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