瀬戸内寂聴が若い女性に「結婚前に読むべき本」としてすすめた一冊とは?
5月27日、ドキュメンタリー映画『瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと』が全国公開され、11月には作家の井上光晴さんと瀬戸内寂聴さんをモデルにした映画『あちらにいる鬼』も公開予定。昨年11月に99歳で亡くなった尼僧で作家の瀬戸内寂聴さんに、死後もなお注目が集まっている。
そんな寂聴さんが「女として、どう生きるのか」「幸福についての考え方」などをつづったのが、『愛の倫理』(青春出版社刊)だ。本書は1968年、寂聴さんが45歳のときに書いたベストセラーで、2020年11月に新装版として復刊されている。
出版社は、当時流行作家と呼ばれていた寂聴さんに、若い女性の甘い愛や恋についてのやわらかなエッセイを期待していた。
しかし、寂聴さんは本書の中で、戦争の真っ只中で青春を過ごし、戦争の傷を受けた寂聴さんの世代の女性の苦悩や、敗戦後、急にアメリカから与えられた女性参政権が、寂聴さんの母や祖母たちの世代がどんなに苦労して、それを手に入れるために闘ってきたかという女性の歴史を語りたかったという。
それは、自我に目覚め、自分の隠された才能と開発に勇敢に挑む女性たちの悩みについて、格別の思い入れがあったからだ。
そして本書の中では、寂聴さん自身の家出、離婚、男性たちとの恋の苦渋や快楽などを正直につづりながら、若い人たちに向けて、これからの恋や愛、結婚や離婚について述べている。
若い女性に「結婚前に何を読めばいいか」と聞かれた場合、寂聴さんは迷わずボーヴォワールの『第二の性』をすすめるという。この本は、彼女の学識と経験と研究のすべてを傾けて、女性はどうしてつくられたか、女性はどういう歴史の上に生き続けてきたか、これから女性はどう生きるべきかを情熱を込めて解き明かしていると述べる。
「私たちはもっと、あなたまかせや、人頼みの生き方を捨て、自分自身の中に眠っている可能性の芽を育てることに、生きる喜びと意義を認めていくべきではないでしょうか」と述べる寂聴さんがどのような人生を送ったのか。
仕事、恋愛、人間関係に対する考え方は、現代に生きる女性たちのヒントとなるはずだ。
(T・N/新刊JP編集部)