【「本が好き!」レビュー】『逃れの森の魔女』ドナ・ジョーナポリ著
提供: 本が好き!『逃れの森の魔女』は、『ヘンゼルとグレーテル』のパロディで、お菓子の家の魔女を主人公とした物語だ。
彼女は、魔法を使う女たちの村に住む有能な産婆だった。魔法を使うといっても、邪悪な魔法ではなく、『魔女の宅急便』のキキのおかあさんのように、どちらかというと癒しの力を持ち、彼女が手を貸せばどんな難産でも母子ともども無事、と人気の産婆だったのだ。
彼女は、若いうちから背が曲がり、とても醜い女性だった。だが、一人娘は彼女の子どもだとは信じられないほど綺麗で可愛いかった。
彼女は、娘を溺愛した。もちろん。助産のお礼として彼女が欲しがったのは、娘をいっそうかわいく見せてくれるものだった。
彼女の知人は、彼女に仕事を斡旋してくれたが、その報酬を欲しがった。だが、彼女がもらってくるのは娘を飾るものばかり。知人は、欲から、魔法陣で悪魔を呼び出しさらなる魔力を授けてもらうようそそのかした。彼女も、娘をさらにきれいにしてあげられるのなら、と誘いに乗ってしまった。
そうやって悪魔にとらわれてしまった醜い産婆。だが、知人は、簡単に彼女を裏切った・・・。
のちに、ヘンゼルとグレーテルがやってきたお菓子の家は、彼女が一人前の魔女となるための試験の場だった。醜い産婆はそこに子どもたちを誘いこみ食べることで、正真正銘の悪い魔女になる。
だが、醜い産婆は、悪魔にとらわれながらも、まだ人間の心を残していた。可愛かった娘への愛を忘れずにいた。自分を支配しようとしている悪魔にバレないように自分が自由な身になるためには、どうしたらいいか。 この作品では、最後に魔女とグレーテルが理解し合ったかのように描かれている。作者は、この魔女をただの悪人にはしたくなかったのだろう。
(レビュー:ぷるーと)
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