【「本が好き!」レビュー】『黄色い夏の日』高楼方子著
提供: 本が好き!お~あの高楼方子さんの新作の児童書。
きれいな装丁。
画家木村彩子さんの美しい挿し絵。
迷わず手に取ってみた。
独特の高楼ワールドに吸い込まれるように読み進めました。
主人公は中学1年生の景介。
美術部所属のわりとおとなしめの男の子。
とある場所にある古めかしい洋館に心惹かれ、描きたいと思う景介。
偶然にもその洋館には顔見知りのおばあさんが住んでいた。
ひょんなことからその家に出入りするようになった景介だが…。
おばあさん小谷津艶子(こやつ・つやこ)さんとの交流は和やか。
こやつさん一人暮らしと思いきや、その家には髪をクルンとカールさせた美少女ゆりあがいた。
チャーミングで気ままなゆりあに心惹かれる景介。
でもね、不思議なんです。
ゆりあは、いつも急に現れて急に消える。
こやつさんは一切ゆりあのことは話さない。
ゆりあとのことは幻なのか?!
しかも景介、小谷津さんの家の裏の少女やや子とも親しくなる。
おかっぱの地味な少女は、自分なりの信念を持ったしっかりした子。
でも、やや子もどこか不思議、言うことが時代錯誤というか…。
景介はもちろん、読んでる私もなにがなんだか頭がグルグルしてきました。
これぞ高楼ワールド。
様子が変になってきている景介を心配する幼なじみの晶子の存在、ホッとします。
晶子もこやつさんと親しくなる。
時のはざまで揺れ動く少年のことを描いた物語。
時空をグルンとまわるような独特の雰囲気にのみこまれる。
時間って、時代ってなんだろう。
時のはざまに行くことって、ないとは言えない。
なんともいえない浮遊感。
この本を読み終え閉じてからも不思議な余韻が残っています。
(レビュー:こまち)
・書評提供:書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」