祭壇に「真っ赤なバラ」ユニークな葬式に込められた意味とは
親族や友人、そして自分自身、お葬式は誰もがいつかは経験する式だ。しかし、自分が主体となってお葬式をあげる時のことをイメージしている人は少ない。だからいざその時になって、「式場はどこにすればいいの?」「棺や祭壇はどのくらいの金額のものを選ぶの?」「お坊さんや神父さんにはいつ連絡すればいいの?」など、はじめて直面する疑問に、どうしていいのかわからなくなってしまう。
■真っ赤なバラにウイスキー…ユニークすぎる葬儀の数々
大切な人が亡くなった悲しみと混乱の中で落ち着いて式の準備をするのはむずかしい。スマホひとつあれば葬儀社を選べる時代にはなっているが、スマホで値段だけを見てパッケージされたお葬式に決めてしまうのは不安が残るものでもある。
また、今のお葬式は一昔前は考えられなかったほどバラエティに富んだ選択肢がある。
たとえば、「真っ赤なバラで祭壇を飾る」「棺の中にウイスキーをなみなみと注ぐ」「バイクのエンジンを吹かして出棺する」などだ。「お葬式は格式ばったもの」と思いがちだが、今はかなり自由になっている。
そんなオリジナリティあふれるお葬式を手掛けるのが小金井祭典だ。この式場を営む是枝嗣人氏は著書『日本一笑顔になれるお葬式』(是枝嗣人著、扶桑社刊)で、いざ「そのとき」を迎えたとき、後悔を減らすための葬儀のあり方についてつづり、ユニークな葬儀に秘められた意味を明かしている。
是枝氏は、お葬式は「ジンジャエール」のようなものと例えている。ジンジャエールの代表的なブランドであるカナダドライのペットボトルをコンビニで買えば150円程度。スーパーでは88円、映画館では200円、ホテルのバーでは500円になる。つまり同じメーカーなら中身は一緒だが、どこで売るかで値段が大きく変わるというわけだ。
このジンジャエール。単位を「万円」にすれば、ちょうどお葬式の値段になる。格安葬儀は38万円からあり、従来の一般的なお葬式は、同じ葬儀内容でも葬儀社によって88万円~200万円と大きな幅がある。ただ、ジンジャエールの味が値段で決まらないのと同じで、いいお見送りができたという気持ちになれるかも値段では決まらない。
是枝氏がやっているのはご家族に「一緒に自家製ジンジャエールを作りませんか?」と提案することだ。市販の時ジンジャエールに自分で蜂蜜などを加えればオリジナルになる。お葬式も同じで、故人が好きだったことを一手間加えることで、オーダーメイドのお葬式になる。
こういったオリジナリティあふれるお葬式は、式が終わってからの遺族の後悔をなくすためであり、遺族の心を喪失感から守るためでもある。多くの遺族の場合、「倒れていたのに発見が遅れてしまった」「死に目に会えなかった」など、看取りの段階ですでに後悔を抱えている。そういった気持ちを抱えながらお葬式に向き合うことになるため、お葬式とは後悔の念を払拭する最後の機会になる可能性もある。だからこそ是枝氏は「日本で一番笑顔になれるお葬式」を目指しているのだという。
本書では、悲しみを正しく癒す方法や具体的に「そのとき」のためにどう準備しておけばいいか、も紹介。普段あまり考えたくないことではあるがゆえに、先送りにしてしまっている人も多いだろう。大切な人や家族のためにも、本書からお葬式の知識を学んでおくのもいいかもしれない。
(T・N/新刊JP編集部)