だれかに話したくなる本の話

小指を立てて「コレがさー」はもう通じない?絶滅寸前の仕草

昔のドラマの再放送を見ていると、「この動作、今はしなくなったな」「この仕草は古いな」と思うことはありませんか? たとえば、小指を立てて「あの人、〇〇部長のコレ(愛人)らしいよ」とヒソヒソ話をすることは、今ではすっかりなくなりました。

やらなくなった動作に、新しくするようになった動作。仕草や動作の変化は、そのまま社会の変化と言えます。『絶滅危惧動作図鑑』(藪本晶子著、祥伝社刊)は、今ではすっかりしなくなった動作、消えつつある動作、今後消えるかもしれない動作に光を当てる一冊。一昔前までは普通だったのに、今ではすっかり見なくなったこんな動作。あなたは「なつかしい」と思いますか?それとも、今でもやっていますか?

■地図を見ながら町をうろうろ・・・

スマホの地図機能を使えば、知らない場所でも迷わずに行くことができます。でも、少し前までは地図を片手に町を散策したり、パソコンで調べた地図をプリントアウトして持ち歩くのがスタンダードでした。ドライブする時は助手席に座る人が地図を片手にナビゲーションすることもありましたよね。紙の地図を使うことが少なくなったことで、地図を広げる動作が「絶滅危惧」に。

「ドライブ」ということでは、今では多くの車にモニタがついていて、目的地までのルートを表示したり、駐車や車庫入れのアシストをしてくれます。だから、車をバックさせる時の「助手席に手をかける動作」も、あまり必要のないものになりつつあります。ひと昔前までは「男性のモテ仕草」に数えられていたこの動作も、いずれ絶滅してしまうのかも。

■あなたは「湯かき棒」を知っていますか?

かつて、多くの家庭でお風呂をわかすのに「風呂釜」が使われていました。風呂釜の難点は、浴槽の中のお湯の温度が場所によって低かったり高かったりすること。それを均一にするために「湯かき棒」なる道具でお風呂をかき回す作業がありました。

今では設定温度を維持してくれる給湯器が当たり前になりつつあり、この作業も「湯かき棒」も姿を消したはず。今の若い人には何を言っているかわからない話ですよね…。

■「指先ぺろり」が絶滅する時

オフィスに目を移しても「絶滅危惧動作」はあります。
たとえば書類をめくる時の「指先ぺろり」。手に脂の多い若い人には不要の動作とされるため「おじさんの仕草」として有名ですが、かつてはオフィスで普通に受け入れられていました(汚いと感じる人はいたかもしれませんが)。

ただ、最近はテレワークの普及もあって、資料や報告書、書類を紙で印刷することは減ってきています。となると、指先をぺろっとなめる動作も不要に。この「指先ぺろり」は紙幣を数える時にも使われる動作でしたが、今後キャッシュレス化が進めば、いよいよ絶滅の時がやってくるのかもしれません。

昔は普通にやっていたのに、いつのまにかやらなくなったあんな動作にこんな仕草。よく思い返すと思い当たるものがあるはず。そんな動作を集めた本書は、「ああ、昔やっていたな」と懐かしい気持ちにさせてくれるのと同時に、「これからこれもなくなるの?」と社会の移り変わりの速さに危機感を覚えさせてくれます。時代に取り残されないために、チェックしてみてはいかがでしょうか。

(新刊JP編集部)

絶滅危惧動作図鑑

絶滅危惧動作図鑑

インターネットやスマホなど、技術の進歩はますます速くなっている。ついこの間まで当たり前のように使っていた物も、気づけば目にしなくなっていることも多い。そうした「物」は、もしかしたら博物館に保存されるかもしれない。だが、物に付随して行っていた私たちの「動作」は、どこに保存されるのか。それらを「絶滅危惧動作」と名づけ、集めたのが本書だ。すでに絶滅の危機に瀕しているものから、もうすぐなくなりそうなものまで。100種類の動作をイラストで解説。

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