【「本が好き!」レビュー】『パリのアパルトマン』ギヨーム・ミュッソ著
提供: 本が好き!傷心を癒すためにパリにやってきた元刑事のマデリン。
一目惚れで借りたパリのアパルトマンは、管理している画廊の不手際でダブルブッキング。
そのダブルブッキングの相手は、人嫌いでかなり変わり者の劇作家、ガスパールという男。
どちらも絶対にこの素敵なアパルトマンを相手には譲らないと怒り心頭。
不動産を貸し出した画廊の男に会いに行ったマデリンは、この素晴らしいアパルトマンが天才画家ショーン・ロレンツの持ち物であること、彼の遺品を管理していること、彼の遺作をさがしてくれないかという話を聞かされます。
地下鉄やビルの壁にスプレーで仲間三人で絵を描いていたいたロレンツは、その後才能を開花させ、天才画家の仲間入りを果たしました。
その才能を開花させたきっかけとなった美しい妻と結ばれ、かわいい子供に恵まれ、絵は飛ぶように売れ、幸せの絶頂のロレンツでしたが、ある日美しい愛する妻と子を誘拐され、子供は殺されてしまうのです…
ひょんなことからマデリンとガスパールは喧嘩を繰り返しながらロレンツの遺した絵を一緒に探すことになります。
そしてロレンツの足取り、誘拐事件の真実を追いながら、二人は自分たちの人生も追っていくことになるのです。
同じ作者の『ブルックリンの少女』も面白かったですが、本作のほうがさらにスピードが増している感じでぐんぐんと物語は進み、ぐいぐいと引き込まれて読むのを止められなくなる面白さ。
出会いが最悪でお互いに最低の印象しかなかった二人が、衝突を繰り返しつつ見事なコンビとなって事件を追いかける、というのはいかにもありがちなパターンでしたが、それもまた嫌な感じもせず。
それは、二人がともに傷ついており、それを癒すためにロレンツの美しいアパルトマンにやってきたという共通点があるから。
二人は謎の絵を探し、ロレンツの息子の誘拐事件を調べていくことで、自分たちの過去にも向き合い、前を向いて進んでいこうとします。
タイトルのパリのアパルトマン、もう文章だけでも本当にうっとりしそうな美しさですが、パリの街並みも、その街中をベスパで走りまわるマデリンの姿も、これは映像化されたら本当に美しいだろうなぁと。
とてもよくできたミステリでした。
(レビュー:yuko)
・書評提供:書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」