だれかに話したくなる本の話

【「本が好き!」レビュー】『ブルックリンの少女』ギヨーム・ミュッソ著

提供: 本が好き!

売れっ子作家のラファエルは、離婚を経験した後、理想的とも思える女性に出会いました。
それが若い女医のアンナ。
二人は魅かれ合い、間もなく結婚する予定になっていたのです。
二人で出かけた旅先で、ラファエルは、お互い隠し事を持たないようにしようとアンナに言ったのです。
しかし、アンナは人は秘密を持っているものだと言います。

不穏な空気を感じたラファエルは、何か隠し事をしているのかとアンナを強く問い詰めてしまうのです。
アンナは話を逸らそうとするのですが、ラファエルは執拗でした。
アンナは、遂にラファエルに対し、一枚の写真を見せ、「これがわたしのやったこと……」と言ったのです。
その写真には三人の焼死体が写っていました。
そして、アンナは黙って出て行ってしまったのでした。

ショックから立ち直ったラファエルは大変なことをしてしまったと気付きます。
自分は、アンナの過去をすべて受け入れると誓って彼女に秘密を言えと迫ったのに何の事情も聴いてやらなかった。
自分の非を認めたラファエルはアンナを探すのですがアンナの姿はどこにもありませんでした。
その後、調べた結果、アンナは予約していた帰りの飛行機チケットを変更して既にパリに戻ったことが分かりました。

とにかくアンナに会って謝罪しようと考え、アンナのアパートに行ったところ、彼女が旅行に持って行ったスーツケースは部屋にあったものの、アンナの姿はありませんでした。
一度は戻って来たんだ。
しかし、他にどこに行く宛てがあるというのか?

心配になったラファエルは、自分のお隣さんで親しくしていた退職警察官のマルクに相談をもちかけ、マルクの伝手でアンナの携帯の履歴を調べたりその他の調査ができないかと頼んだのです。
しかし、マルクも少し神経質過ぎるんじゃないかと言うばかり。
それでもラファエルが収まらないので、マルクもアンナの行方を探すのに協力することを約束します。

こうしてラファエルとマルクによるアンナの捜索が始まるのですが、調べて行く内にどんどんおかしな事が分かって来るのです。
アンナは拉致されたのではないか?
今やマルクも真剣になってアンナを探し始めています。
マルクは、警察に通報することをラファエルに勧めたのですが、ラファエルはこれまでのアンナがまるで世間から身を隠すようにして生活していたことから、それはアンナは望まないのではないかと考え、二人だけで探すことをマルクに歎願するのです。
  ということで、本作はラファエルとマルクの二人によるアンナの捜索、そしてその背後に隠されていた驚くべき事実が次々と明らかになっていくというミステリです。
大変手慣れた印象を受ける作品で、短い章立てでどんどん読ませていきます。
手慣れ過ぎていてちょっと予定調和的と感じるところもないではありませんが、手堅いサスペンス・ミステリではないでしょうか。

私は著者の作品を読むのは初めてでしたが、巻末解説を読むと著者はベストセラー作家だそうで、その作品は映画化もされており、日本でも公開されているのだとか。
まったく知りませんでした。
どうりで書き慣れているわけだ。
あっと驚くサプライズ(一応あるんですよ)にガツンとやられたという程の衝撃を受ける作品とは言いにくいのですが、大変まとまりの良い、安心して読めるサスペンス・ミステリではないでしょうか。

(レビュー:ef

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ブルックリンの少女

ブルックリンの少女

失踪した恋人アンナの行方を追うラファエル。元刑事マルクと調査を進めると、過去の連続少女拉致監禁事件や不審な死亡事故に突き当たり……。仏No.1ベストセラー作家が贈る、息もつかせぬサスペンス長編。

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