教え上手な人だけが知っている人材育成のコツ
管理職やリーダー職だけでなく、後輩ができた若手社員にも「うまく教える」スキルは必要だ。
教えたことができない後輩にはヤキモキさせられるが、「なんで教えたのにできないんだ!」と怒ってもはじまらない。もしかしたら自分の教え方が悪いのかもしれない。
■そもそも「教える」とは何か?
『仕事を教えることになったら読む本』(濱田秀彦著、アルク刊)では、22年間セミナー講師として「教えること」を職業にし、4万人を指導してきた濱田秀彦氏が、明日から活用できる「教えるスキル」について明かしている。
まずは「教える」をきちんと定義してみたほうがいい。
教えるとは、「設定したゴールに相手を運ぶために、知識、技術付与し、意識を高めること」と本書では定義している。ここに登場する「知識」「技術」「意識」の3つが、教えるうえでカギになる。知識は知っていること、技術はできること、意識は心構え。この3点セットをどう教えていけばいいのか。
「知識」を教えるということは、自分の持っている知識を相手に移転すること。そのための方法がティーチングだ。ティーチングは、最初に動機づけ、中心となる説明、最後に効果測定で、完成する。
次は「技術」。
技術を教えるということは、自分の持っている技術を相手に移転すること。技術を教えるトレーニングは、6つの手順を踏むことになる。
1.動機づけ
2.やってみせる
3.説いて聞かせる
4.させてみる
5.ほめる
6.見届ける
頭で覚える知識はティーチングで教え、体で覚える技術はトレーニングで教えて、技術ができるようになることがトレーニングのゴールとなる。
3つ目は、「意識」を教えること。相手によって考え方や価値観が違うため、知識や技術と違い、相手に意識を移転することはできない。なので、意識だけは相手から「引き出していく」ことが必要となる。
そのための方法が、「相手が自ら実践するように仕向ける」ことを目的とするコーチングだ。コーチングは、「傾聴」と「質問」の2つのスキルから成り立っている。傾聴といわれる共感的な聞き方と、「はい・いいえ」ではなく、自由に答えられるオープン質問を中心にした適切な問いかけがセットになって初めて効果が出る指導法だ。
「知識」「技術」「意識」を教える方法を状況によって使い分けることで、相手を設定したゴールに到達させる、ということだ。
勤続年数が長くなれば、おのずと後輩もできる。また、管理職となれば、教える部下の人数も増えるだろう。「教えるスキル」はどんな職業、職種の人も必須の能力。「あの人に教わりたい」「理想の上司」と、部下からも慕われる上司になるためにも、「教え方」をしっかり身につけてはどうだろう。
(T・N/新刊JP編集部)