だれかに話したくなる本の話

【「本が好き!」レビュー】『エンド・オブ・ライフ』佐々涼子著

提供: 本が好き!

今春、姉が旅立った。何年か前に病を患っていることを知らされたが、治療を続け時に元気な姉を見ると、そう簡単には逝かないだろうと根拠のない希望を持っていた。姉は「やりたいことはやってきたし、いつ死んでも後悔はない」と強気だった。時折、一緒に食事をしていたのがコロナ禍で、会うこともなくなっていた。メールをして、元気であることを確認して安心していたのだが、ある時返事がなかった。病状が悪化して在宅医療をお願いするまでになっていたのだ。在宅医療とはどんなものなのか。在宅医療を受ける患者は、どのように自分の病を受け入れるのか。いつか、自分もあちら側に行くであろうその時、どんな覚悟を持っていたら良いのか、いろいろな思いで読み始めた。

「エンジェルフライト国際霊柩送還士」でノンフィクション賞を受賞した佐々氏は、編集者から「在宅医療について取材をしてみないか」と言われたことがきっかけで、渡辺西賀茂診療所で取材をすることになった。その時、佐々氏に、話しかけてくれたり、世話を焼いたりしてくれたのが森山文則氏だったそうだ。通院が困難な人、退院後も継続して治療が必要な人、終末医療を望む人などのために、患者の自宅を医師、看護師が訪問し行う医療に加えて、渡辺西賀茂診療所は、在宅患者たちの最後の希望を叶えるというボランティアをしていた。

患者の希望があれば、結婚式や墓参り、潮干狩りにディズニーランドなど医師と看護師が同行し最後の家族の思い出を作るサポートをする。ボランティアなので、費用は診療所持ちで行う。どこまでも、患者の気持ちに添って医療やボランティアを行う姿勢には、自然に頭が下がる。患者の中には、認知症の人もいるし、スタッフに悪態をついたり、罵倒する人もいる。そうして、佐々氏は2013年から2018年に渡る取材の中で、辛い体験もしながら、いかに逝くかはその人がいかに生きて来たかに大きく左右されるということを感じたらしい。

人は生まれる時も、逝く時も選ぶことはできない。病院のベッドで最期を迎える人もいるだろう。家族に囲まれて住み慣れた家から旅立つことができるのは、何よりも幸せな最期なのかもしれない。私の姉がお世話になった訪問看護の医師は、偶然にも義兄の親戚と深く縁のあった人だったらしい。

「エンド・オブ・ライフ」をきっかけに、多くの人の死を知ることによりこれからどのように生きるべきか、改めて考えあたりまえの日常に感謝しなければと思った。

(レビュー:morimori

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エンド・オブ・ライフ

エンド・オブ・ライフ

ベストセラー『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場』の著者が、こだわり続けてきた「理想の死の迎え方」に真っ正面から向き合った。

2013年に京都の診療所を訪れてから7年間、寄り添うように見てきた終末医療の現場を感動的に綴る。

この記事のライター

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