だれかに話したくなる本の話

読んだら元の自分には戻れない 朝井リョウ『正欲』が炙り出す「多様性」の危うさ

『正欲』(新潮社刊)

社会が目指す一つの理想として「多様性」という言葉が使われるようになったのはいつからだろうか。

人の価値観や考え方、生き方、働き方、性的嗜好、人種、性別、民族…。すべてが尊重されるべき、というのは確かにあるべき社会像だろう。ただ、意地悪な言い方をするなら、人が他者に寛容になれるのは、その他者が自分にとって理解可能であり、さらにその存在が自分の利益を脅かさない時だけかもしれない。もし、ある層の人々が主張する権利が自分の利益を脅かした時、私たちは「多様性」という理想のもとに、彼らを許容できるほど寛容でいられるのだろうか?

正欲

正欲

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それはつまり、いてはいけない人間なんて、この世にいないということだ。

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