くりぃむしちゅー上田の「たとえツッコミ」を存分に楽しめる本
お笑いコンビ・くりぃむしちゅーの上田晋也氏の「たとえツッコミ」を目一杯楽しめるエッセイ『経験 この10年くらいのこと』(上田晋也著、ポプラ社刊)。
本書は、現在50歳の上田氏が40代の10年間を振り返り、17、8年ぶりに文章を書いたという初の書き下ろしエッセイだ。
父親としての一面や子どもの話、多くの番組で司会を務める上田氏ならではの番組裏話、実兄の話、ビートたけしさんや有働由美子さん、関根勤さんといった芸能関係の交友録、仲の良い俳優のえなりかずきさんとの旅行記など、盛りだくさんのエピソードの中に随所に「たとえツッコミ」が散りばめられている。
そして、本書を執筆するきっかけとなった企画「昔話突っ込み」では、企画タイトルそのままに昔話『桃太郎』『浦島太郎』『鶴の恩返し』にツッコミを入れていく。
『桃太郎』の序盤を本書から抜粋すると
むかし、むかし、
上田「二度手間だよ!ボルビックの水割りか!」
あるところに、
上田「漠然としてんな!来月の午後、都内で会おうね、っていうタイプか!」
といった具合に、昔話の一文一文にツッコミが入るのだ。
なぜ昔話にツッコミを入れようと思ったのか。それは、「この世の中、圧倒的にボケの人間が多い」と、30年近く前から上田氏が思っているからだ。ツッコミの人間より、ボケの人間のほうが多いこの現状の元凶が昔話にあるというのだ。
昔話は、無茶な話であるにもかかわらず、登場人物にツッコミのポジションを担っている人がいない。なので、それを読む幼児がどの登場人物に感情移入しても、ボケになってしまい、自然とボケの感覚が育まれる。逆に、どの人物にも感情移入せずに、客観的に読んだ人間が、後にツッコミの人間になるのではないか。
そんな理由から、数百年間ボケっぱなしの昔話に上田氏がツッコミを入れていこう、とこの企画が生まれたのだ。よく知っている昔話も、今までとは違う楽しみ方ができるはずだ。
「本書は、私の10年間の非成長の記録である」と前書に記されているが、たとえツッコミを存分に浴びながら、上田氏のトークを文章でただただ楽しむ時間を提供してくれる1冊だ。
(T・N/新刊JP編集部)