わずかな手がかりをもとに推理。まるで探偵のような「古生物学」研究の世界
「古生物学は探偵学」と言われていることを知っているだろうか。
今は見ることができない恐竜やアンモナイトなどの古生物が、どのような姿をしていて、何を食べ、どこで暮らし、なぜ滅んだのかという謎に、「化石」という手がかりから読み解いていく。まさに、推理小説に出てくる探偵のような謎解きをしていくのが、古生物学の研究者だ。
『化石の探偵術』(土屋健著、ロバート・ジェンキンズ監修、ツク之助イラスト、ワニブックス刊)は、そんな知的興奮に魅せられた研究者たちが実践しているさまざまな「技術」を紹介する一冊だ。
例えば「歯」。古生物において、「歯」はその動物の食性を知る上で重要な手がかりだ。
恐竜類の食性を推理するときも、この「歯」は役立つという。葉の縁に並ぶ細かなギザギザのつくりの「鋸歯」は肉食性であることを示す証拠で、この鋸歯を確認した上で、歯全体の形状に注目すると、どんな恐竜かが分かるそうだ。
ティラノサウルスに代表される大型爬虫類の歯は、太さがあり、獲物を骨ごと噛み砕くことができたとされている。その一方で同じ肉食恐竜でも、厚さがなく、ナイフのような形状の歯もある。この場合、骨ごと噛み砕くには強度が足りないため、切り裂くように肉を食べていたと考えられるという。ティラノサウルスより大型とされるギガノトサウルスがこのタイプで、大型肉食恐竜でも歯の形から生態の違いが推理できるのだ。
地質を調査し、地層にある化石から古生物の生き様や古生物同士のつながりを復元する古生物学者の仕事を知ることができる本書。ぜひ、古生物学の世界を楽しんでみてほしい。
(T・N/新刊JP編集部)