【「本が好き!」レビュー】『魂の重さは何グラム?―科学を揺るがした7つの実験』レン・フィッシャー著
提供: 本が好き!タイトルでスピリチュアル系の本かと思いつつ読んでみた。
まったく違って、科学史の裏側こぼれ話みたいなかんじでした。
著者はイグ・ノーベル賞を受賞した物理学者です。
それだけに著者が選んだ7つの実験は非常に科学的であり、そこが面白い。
まず最初に出てくるのは、タイトルにもなっている魂の重さを量るという実験です。
これはアメリカのマクドゥーガルという医師が死亡直前と直後の患者の体重を量って比較したものだ。
そこで半オンスの減少がみられたことで、魂の重さが量れたのかもしれないという話になります。
死亡直後の人間の重さがわずかながら減少するという実験をもとに、今度はネズミを死亡前後で密閉された瓶ごと量ってみたりする実験に発展する。
科学者的な発想もあり哲学的な思想もあり考えさせられる。
第2章では運動の法則を発見したガリレオについて見ていきます。
天体の動きや力学の発想はやはり天才的なガリレオだが、アリストテレス派を無駄に批判したり派手に遊びまわってみたり、バチカンを挑発して幽閉されるような人間くさいガリレオの姿が浮かび上がってくる。
ニュートンの引力の法則の発見やフランクリンの稲妻の凧揚げ実験は有名だが、それを詳しく紹介してさらに引力や稲妻についてわかりやすい講義もしています。
フランクリンの凧揚げ実験も成功したからこそ科学の教科書に乗るくらいの偉業となっているが、一歩間違えれば雷に打たれて科学史の犠牲者として名前を残したかもしれない。
科学者って時に命を危険にさらしてまで物事を追究する人種であるといういい例だ。
第5章では錬金術について、そして第6章ではフランケンシュタインの物語から電気が人体に与える影響についての話でした。
人造人間に命を与えることはできないけれど、電気の刺激で筋肉を動かしたり、反対に止めることもできる。
7つ目の実験はクローンの話から、生命の本性についての論争を紹介して締めくくっています。
こうして昔の科学者が行った数々の実験をみていると、科学の発展に好奇心が多大な貢献をしているのかもしれないと思う。
筆者も少年時代には数々の化学実験をしたそうで、時には過マンガン酸カリの結晶を硫酸に落とすような真似もしています。
幸いにも爆発する前にシンクに流したので被害は出ずに終わったが、子供に薬品を渡すときには目を離してはいけないという教訓になる。
今時は安全な実験しかさせないだろうし。
科学の進歩の原動力を見た気がする本だった。
(レビュー:DB)
・書評提供:書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」