だれかに話したくなる本の話

霜降り・粗品が「3人目の霜降り明星」と言う放送作家・白武ときおの素顔

テレビでは今、霜降り明星をはじめとした「お笑い第7世代」の活躍が目覚ましい。

そんな第7世代にも、仕掛け人といえる同世代の「裏方」がいる。その代表的な存在が放送作家の白武ときおさんだ。

「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」(日本テレビ)や「霜降りミキXIT」(TBS)といったテレビ番組に放送作家として携わる一方で、霜降り明星のYouTubeチャンネル「しもふりチューブ」をはじめ、「みんなのかが屋」「ジュニア小籔フットのYouTube」など、芸人チャンネルにも多数参加。
霜降り明星の粗品さんからは「3人目の霜降り明星」と言われ、白武さんの仕掛けるものが次のトレンドになるとすら評価されている。

今回はそんな白武さんに、自身の企画の考え方やコンテンツとの向き合い方を明かした初の著書『YouTube放送作家 お笑い第7世代の仕掛け術』(扶桑社刊)についてお話をうかがった。

(取材・文:金井元貴)

■テレビ、ラジオ、YouTube…フィールドが広がる放送作家の仕事

――『YouTube放送作家』についてお話をうかがっていきます。まず、白武さんご自身のことについてお聞きしたいのですが、放送作家としてのキャリアを歩む経緯から教えてください。

白武:もともと中学・高校の頃にテレビをすごく観るようになって、その中でも特にダウンタウンさんが好きで。そこから松本人志さんが同級生の放送作家・高須光聖さんとやっている『放送室』というラジオ番組を聴いて、放送作家という仕事があると知りました。

高須さんは「御影屋」というホームページを運営されているのですが、そこにはたくさんの有名作家やテレビ制作者との対談が掲載されていて、秋元康さんや鈴木おさむさんが高校生、大学生の頃からキャリアをスタートさせていたことを知って、自分も放送作家をやりたいと思ったんです。

実際に放送作家の仕事をやり始めたのは、大学に入ってからです。中野俊成さんと鮫肌文殊さんという二人の放送作家が主催していたイベントに通っていたら、ある時、「御影屋」で知っていた樋口卓治さんという放送作家が隣にいらっしゃって。「自分も作家になりたい」と声をかけたら「来週、仕事場においで」と誘われて、そこからキャリアがスタートしました。

初めて関わらせていただいた番組は、当時テレビ朝日の深夜に放送されていた「学生才能発掘バラエティ 学生HEROES!」ですね。

――1990年生まれで現在29歳。放送作家歴としては8年ほどですが、この活動歴、年齢というのは業界内ではまだ若手になるのですか?

白武:そうですね。芸人で例えるなら、M-1グランプリに出場しているコンビ歴15年のコンビも、キャリアを積んでいなければ若手とみなされることが多いですが、放送作家もそういう部分はありますね。

また、実際どのテレビ番組の現場でも僕が最年少だったりします。僕よりも若い作家もいますが、まだあまりテレビに食い込めていなかったり、大きな成果を出している人が少ないので、僕が若手とみなされることが多いです。

――若手としてのアドバンテージやデメリットはありますか?

白武:うーん…仕事の経験値もそうですし、今、活躍されている放送作家さんたちは世代に限らずSNSを駆使して情報をつかんでいるので、やはり経験値のある人の方が面白いですよね。

「テレビ村」というか、いかに知り合いを増やして仕事に誘ってもらえるかという側面があって、なかなかそこに入り込めむのが難しい。最近は経費削減などで、番組に付く放送作家が減っていたり、ディレクターが構成を書くということもありますし、さらにコロナ禍でそうした状況が進んでいくのかなと思います。

――その意味で、白武さんがフィールドの一つにしている「YouTube」は放送作家の活躍の新たな場になるのではないかと思います。最近ではまるでテレビ番組のようなコンテンツを配信するYouTubeチャンネルも出てきて、クオリティが一気に上がっていますが、YouTubeとテレビの明確の違いはどこにあると思いますか?

白武:まずスタート時点での予算ですね。テレビの場合は枠があり予算がついていて、番組を作りましょうとなるけれど、多くのYouTubeの場合は予算もついていなくて、自分たちの持ち出しで始めて、ビジネスとして成立させていかなければいけないという点は大きく違いますね。

今後はテレビ番組とYouTubeの差はなくなっていくんじゃないかなと思います。今、千原ジュニアさん、小籔千豊さん、フットボールアワーさんが「ジュニア小籔フットのYouTube」というYouTubeチャンネルをやっていますけど、テレビ番組でも豪華な座組みですし、編集のクオリティも凄いです。今後、そういう番組が増えていくように思います。

――白武さんはテレビとYouTubeの番組の作り方として、どちらの方が好みとかありますか?

白武:それぞれに良さがあります。YouTubeは少人数でやることが多く自分に決定権があるので、やりがいを感じやすいです。テレビは大人数で作るのが基本ですが、そこにもテレビの制作現場ならではのやりがいがあります。僕はいろんな現場で、いろんな違う作り方をやれるほうが楽しいと思います。

今、一番面白いと感じているのはYouTube生配信です。ラジオのように、リスナーというか視聴者と一緒につくり上げていく感覚が面白いです。また、ラジオは作家や演者が選んだメールだけが読まれますけど、YouTubeライブは面白くないコメントも全部流れるので、全体が生配信に対してどう感じているのかが分かる部分は、嘘がなくて面白いと思います。

■初対面の霜降り明星に感じた「いいな」の正体

――白武さんはお笑い第7世代の筆頭格である霜降り明星と、彼らがブレイクする前の2017年からお仕事をされていて、粗品さんからは「3人目の霜降り明星」と言われています。彼らに初めて会ったときに、「いいな」という感覚が白武さんにあったそうですが、この「いいな」は具体的にどんな感覚だったのでしょうか。

白武:芸人さんって楽しいから続けている方もいれば、絶対に売れたいと野心を燃やしている方もいるのですが、霜降り明星さんは絶対に売れたい、お笑いの世界をひっくり返してやりたいという心意気を感じたんです。その野心に対して素直に「いいな」と。「どうせやるなら売れるぞ」という熱い気持ちですね。

――その野心に対して、白武さんが呼応した。

白武:そうです。霜降り明星さんの持っている面白さ、才能をどうにかして世の中に届けたいと思いました。

――今、様々な芸人さんと一緒に仕事をされていますが、作家としてどういう風に彼らをサポートしていこうと考えるのですか?

白武:本人にとってテンションが上がることや、得意なことを活かす動画を作ろうと思っています。せいやさんの「ナルト」「モノマネ」、粗品さんの「競馬」「深夜アニメ」など、他のメディアでは深く語る場面がないピンポイントなものでも、YouTubeだから肩肘張らずハードル低くできます。まだ掘られていない一面を引き出せたらなと思っています。

――ただ、得意なものを打ち出すことが、そのままイコールとして多くの人に受け入れられるということにはならないと思います。その意味で、「売れる」ための味付けをどうするのですか?

白武:とにかく突き抜けることかなと思います。ヒロシさんのキャンプに対する熱、広瀬香美さんの歌に対する熱などは、心を動かされます。熱があり技術やパフォーマンス能力がついてくれば伸びるのではないかなと。得意なことがなくても例えば「いろんなことができない」という特徴を伸ばしていったり、リアクションが面白ければ、それを得意なものとして伸ばしていくことができると思います。

後編に続く

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この記事のライター

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金井元貴

1984年生。「新刊JP」の編集長です。カープが勝つと喜びます。
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